生活習慣病と慢性腎臓病(CKD)の関係

[監修]東京女子医科大学 血液浄化療法科 特任教授 土谷 健 (つちや けん)先生プロフィール

糖尿病と慢性腎臓病糖尿病と慢性腎臓病

「糖尿病」と慢性腎臓病の関係

糖尿病による血糖コントロールが不十分で高血糖状態が長期間続くと、糸球体が障害を受けてたんぱく尿が出るようになり、腎臓のろ過機能が低下します。

この状態を「糖尿病性腎症」といいます。

糖尿病性腎症も慢性腎臓病(CKD)の1つです。

糖尿病の治療をしないまま高血糖状態が続くと、腎機能は悪化し続けます。最終的には、尿を作る能力が失われた、腎不全の状態になります。

最近の報告では、糖尿病性腎症が進行し、透析が必要となる患者さんの数が急増しています。

新たに透析になった患者さんを病気ごとに分けると、糖尿病性腎症が第1位で4割以上を占めています(※)。また、現在透析を受けている患者さんの原因となった病気も、一番多いのは糖尿病性腎症です。

一方、糖尿病性腎症が進行すると、糸球体の中の血管が狭くなり、ろ過作用が低下して、血圧が上昇するため、高血圧になりやすくなります。そして、さらに腎臓の状態を悪化させるという悪循環に陥ります。

このため糖尿病性腎症の発症・進展を抑制するには、血糖コントロールを良好に保つことが大切になります。

  • 「わが国の慢性透析療法の現況」(2017年12月31日現在)日本透析医学会

糖尿病と腎臓病の食事療法

慢性的な高血糖状態を改善するためには、食事療法が特に重要です。

糖尿病の食事療法は、腎臓の障害の程度によって変わってきます。

糖尿病患者さんの食事療法は、血糖をコントロールすることが目的です。血糖値をコントロールするため、主に糖質を減らした低エネルギー食になります。

糖尿病性腎症の進行時には、血糖コントロールと同時に腎症の進行防止が重要になります。糖尿病の食事療法に加えて、たんぱく質や塩分、カリウムの摂取量を制限します。

また、カロリーが不足すると体は筋肉などのたんぱく質を分解してエネルギーとして使用し始めます。それを防ぐため、たんぱく質を減らした分は炭水化物や脂質の割合を増やし、適切なエネルギー量を摂るようにします。

糖尿病患者さんに対し、一定の目安として炭水化物50~60%エネルギー、タンパク質20%エネルギー以下を目安とし、残りを脂質としています(表)。

残りの脂質が25%エネルギーを超える場合は、マグロ、イワシ、ごま油などに多く含まれる多価不飽和脂肪酸の割合を増やすなどの配慮が必要とされています。

高血糖によって腎臓が傷んでしまう「糖尿病性腎症」は早期に発見し、血糖コントロールを良好に保つことで、病気の進行を抑えることができます。


※編集/日本糖尿病学会. 糖尿病診療ガイドライン2019. 南江堂;2019. P37-38. ※日本糖尿病学会. http://www.jds.or.jp/modules/important/index.php?content_id=40(2022年11月現在)

腎臓病の1つにADPKD(常染色体優性多発性嚢胞腎)という遺伝性の病気があります。腎機能を低下させる遺伝性の腎臓病について、気になる方、知りたい方はここをクリック。