栄養素から見た腎臓 〜腎由来のさまざまな血液中の成分の異常

[監修]東京女子医科大学 血液浄化療法科 特任教授 土谷 健 (つちや けん)先生プロフィール

ナトリウムナトリウム

腎臓とナトリウムの関係

ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、クロール(Cl)、マグネシウム(Mg)、リン(P)などを電解質といいます。

腎臓はこれら電解質の濃度を正常に保ち、血液を弱アルカリ性にする働きをしています。

この中で、腎臓とナトリウムの関係を説明すると、腎臓は過剰なナトリウムを排泄することで血圧の調節を助ける機能を持っています。したがって、排泄されるナトリウムの量が少なすぎると、体のナトリウム量が多くなり、血圧が上昇しやすくなります。

低ナトリウム血症とは

低ナトリウム血症(低Na血症)とは、血液中のナトリウム濃度が135mEq/L(※)未満の状態のことをいいます。ナトリウム濃度が120mEq/L以下になると重症と診断されます。

主な症状としては吐き気、疲労感、頭痛、全身倦怠、筋けいれん、意識障害、昏睡などがあります。

多く見られる低Na血症の原因は、大量飲水(1リットル/時以上)、下痢、嘔吐(おうと)、過度の運動、高齢、心不全、肝不全、腎不全、薬物使用などです。

また、低Na血症には以下の3つのタイプがあります。
(1)体液量が減少した低Na血症
体内の総ナトリウム量が減少し、同時に水も失われます。
(2)体液量が正常な低Na血症
体内の総Na量は変わりませんが、水が過剰に貯えられることによって引き起こされます。
(3)体内の総ナトリウム量が上昇しているにもかかわらず、それを上回る多量の水が細胞外液(細胞の外に存在している体液の総称)に溢れることで起こる低Na血症。

  • mEq/L:溶液1リットル中の溶質の当量数

高ナトリウム血症とは

高ナトリウム血症(高Na血症)とは、血液中のナトリウム濃度が145mEq/L以上の状態のことをいいます。ナトリウム濃度が160mEq/L以上になると重症と診断されます。

主な症状としては口渇、水分多飲、頭痛、嘔吐、痙攣(けいれん)、倦怠感などで、重くなると意識障害に陥る場合もあります。

原因は、大きく3つに分けられます。
脱水によるもの
薬物によるもの
疾患によるもの

ナトリウムは他にも、身体のエネルギー源であるブドウ糖やアミノ酸の吸収にも必要であり、筋肉や神経を動かすときにも欠かせない物質です。

ナトリウムは塩、しょうゆ、みそなどに含まれており、塩分(塩化ナトリウム)から摂取されます。多めに摂取された塩分は、腎臓が尿に余分なナトリウムを含めて、体外に排出します。

腎臓病の1つにADPKD(常染色体優性多発性嚢胞腎)という遺伝性の病気があります。腎機能を低下させる遺伝性の腎臓病について、気になる方、知りたい方はここをクリック。