腎臓「働き」いろいろを知ろう
[監修]東京女子医科大学 血液浄化療法科 特任教授 土谷 健 (つちや けん)先生プロフィール
余分な酸を尿として排泄する
腎臓は血液の酸度を一定に保つ役割ももっています。
人の体は約60%が水分で、健康な状態では、その体液はpH(※1)7.4程度の中性に近い弱アルカリ性に保たれています。
一方で、体の中では、糖質、蛋白質、脂質など栄養素の代謝に伴ない、1日あたり20,000mEq(※2)の酸がつくられますが、余分な酸は、腎臓の働きにより尿として体の外に排泄したり、肺から二酸化炭素として排出しています(図)。
さらに残った酸は、腎臓で調節される重炭酸イオン(※3)と呼ばれる物質によって吸収され、炭酸になることでアルカリ性に働き、体内の酸度を下げます。
ところが、腎臓の働きが悪くなると、酸の排泄がうまくいかなくなり、体内は「アシドーシス」と呼ばれる酸性に傾いた状態に陥ってしまいます。
体が酸性に傾くと、免疫力が低下して、さまざまな病気を引き起こす可能性があります。
また、疲労感や脱力感などといった症状を感じることもあるといわれています。
このように、腎臓は血液の酸度を一定に保つ役割ももっています。
- ※1 pH (ペーハー):酸性・アルカリ性の度合
- ※2 mEq(ミリ当量):量を表示する単位
- ※3 重炭酸イオン:電解質の1つで、アルカリ性の物質
血液中にアルカリ性物質を放出する
体が酸性に傾いたとき、腎臓は、血液中に重炭酸イオン(アルカリ性物質)を放出します。
重炭酸イオンは中和する酸と同じ量を消費しますので、糸球体でろ過されたあと、尿細管で再吸収し、補充しています。
つまり、腎臓は重炭酸イオンの量を保つ働きもしているわけです。
腎臓の機能が悪くなり、重炭酸イオンが減少すると、体は酸性に傾きます。
反対に、重炭酸イオンが増えると、体はアルカリ性に傾き、けいれん・吐き気・しびれなどの体調不良が現れるといわれています。
人間が生命活動を維持していくためには、腎臓が大きく関係している酸とアルカリのバランスを一定に保つ必要があります。
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