腎臓が悪くなると出てくる「各症状」のいろいろを知ろう
[監修]東京女子医科大学 血液浄化療法科 特任教授 土谷 健 (つちや けん)先生プロフィール
「むくみ」は腎臓病の初期症状
腎臓の病気は自覚症状が現れにくいことが多いのですが、「むくみ」「血尿」などは比較的気づきやすい症状といえるでしょう。
腎臓病の初期症状としては、足・手・顔などがパンパンに腫れてしまう「むくみ(浮腫)」があげられます。
血液をろ過している腎臓の糸球体に障害が起こると、網の目が目詰まりして血液を十分ろ過することができなくなり、老廃物や余分な水分、塩分を体外に排泄できなくなります。
この体に溜まった余分な水分、塩分がむくみの原因となります。
むくみの原因として腎臓病はとても多く、むくみの症状がみられる場合は、急性腎炎、慢性腎炎、ネフローゼ症候群、腎不全などの可能性が疑われます(表1)。
多発性のう胞腎(PKD)でも、腎臓の働きが低下するとむくみなどの症状が現れ始めます。
むくみはどうやって起こる?
人間の体は約60%が水分です。このうち、2/3(体重の40%)は細胞内液として体の細胞の中にあり、残りの1/3(体重の20%)が細胞の外にあります。細胞の外にある水分のうちの1/4(体重の5%)は血漿(けっしょう)として血管の中を流れ、残る3/4(体重の15%)は組織間液として細胞と細胞の間に存在しています(図1)。
むくみとは、細胞と細胞の間の水(組織間液)が異常に増加した状態をいいます。
血管は、たんぱく質などの大きなものは通しませんが、水やミネラルなどの小さなものは通れるようにできています。健康な人は血管の外側と内側の圧力がバランスを保っているため通常はむくみません。
しかし、毛細血管の血圧が何かの原因で高くなってしまうと、水分が血管から細胞と細胞の間に染み出してきます。これがむくみとなって現れてきます。
また、血管の中のたんぱく質の濃度が低下した場合、血管の浸透圧が低くなります。すると水分が血管から染み出すことで、むくみが起こってきます。
この他に、毛細血管がたんぱく質や水分を通しやすくなった場合などにも、むくみが起こります。
むくみが起きる病気
むくみの原因が腎臓の病気である場合、ネフローゼ症候群や急性糸球体腎炎、慢性腎臓病(CKD)などが考えられます。
ネフローゼ症候群は、尿からたんぱくが大量に漏れ出してしまうために、血液中のたんぱく質が少なくなってしまう病気です。血液中のたんぱく質が少なくなると浸透圧が低くなるため、血中から細胞と細胞の間に水分が移動して、むくみが起こります。
急性糸球体腎炎では腎臓が炎症を起こし、尿を作る能力が低下します。これにより余分な水分が排泄されず、身体が水分過多になってむくみが起こります。
CKDでも腎機能が低下してくるとむくみが出やすくなります。
むくみはどうやってみつけるの?
血液は心臓の働きや、足の筋肉の収縮により、重力に逆らって体内を循環しています。
しかし長時間立っていると重力の影響で血液が足に溜まり、血管の圧力が高くなることでむくみが起こります。
そのため、健康な人でも、夕方に足がむくむことがあります。このような、休息をとれば解消される一過性のむくみであれば、過剰に心配する必要はありません。
むくみが強い場合には、足の脛(すね)などを指で押すと、へこんで指の跡が残ります。
他にも、顔面のむくみ感、急な体重増加、下腿(ひざ下)の腫れなどがみられます。
このようなむくみの症状が一日中持続したり、何日も続く場合には、注意が必要です。
腎臓病は「血尿」と「タンパク尿」を伴う
「血尿」とは、尿に“血が混じる”状態のことです。
血尿は眼に見てわかるものを「肉眼的血尿」といいます。
顕微鏡で見なければわからない「微少血尿」もあります。
血尿の原因は2種類あり、1つは糸球体になんらかの障害が起きている場合、もう1つは膀胱にがんができたり、結石(※)で粘膜が傷ついたりした泌尿器科的原因のことが多いと考えられています。
また、糸球体に由来するものは血の塊をつくりませんが、泌尿器科的原因では血が固まるのが特徴です。
障害された糸球体から漏れてきた血尿は、尿中に栄養素のタンパク質が出てしまう「タンパク尿」を伴うことも多く、主として慢性腎炎などの内科的病気が原因となります。
タンパク尿も、糸球体が障害される結果として発生します。
タンパク尿や血尿は、尿を検査することによって調べることができます。
血尿、タンパク尿を伴う症状がみられる場合、糖尿病性腎症、肥満関連腎症、糸球体腎炎、ネフローゼ症候群などの腎臓の病気の可能性が疑われます(表2)。
PKDの症状では血尿が一般的ですが、タンパク尿がみられることもあります。全くみられないこともしばしばみられます。
「血尿」「タンパク尿」は検尿で初めてわかることが多いのですが、尿が泡立つ、赤褐色調になるなどで自分で気づくこともあります。
※ 結石:体内で分泌物の成分などが固まって石状となったもの
腎臓病の1つにADPKD(常染色体優性多発性嚢胞腎)という遺伝性の病気があります。腎機能を低下させる遺伝性の腎臓病について、気になる方、知りたい方はここをクリック。