栄養素から見た腎臓 〜腎由来のさまざまな血液中の成分の異常

[監修]東京女子医科大学 血液浄化療法科 特任教授 土谷 健 (つちや けん)先生プロフィール

カリウムカリウム

腎臓とカリウムの関係

カリウムは、体内に存在する量がもっとも多いミネラルです。細胞の浸透圧(※)を維持調整する働きがあるため、生命維持活動の上で欠かせない役割を担っています。また、体に含まれている余計な塩分を体の外に出す効果があることから、血圧を下げる代表的な栄養素といわれています。

腎臓の働きが低下するとカリウム制限が取り上げられますが、カリウム自体が腎臓に悪影響を及ぼすわけではありません。腎臓に障害があると、カリウムを十分に尿に排泄することができずに、体内に蓄積してしまいます。血中のカリウム濃度が上がってしまうと危険な不整脈が起きたり心臓が止まって突然死することもあります。

このようなリスクを回避するために、血液中のカリウム濃度が正常範囲内であるようにカリウム摂取を制限する必要があるのです。

  • 浸透圧:濃度の低い液体が、濃度の高い液体へ移動する水圧のこと

低カリウム血症とは

体内のカリウムの98%は細胞内、残りの約2%が血液中など細胞外にあります。しかし血液中のカリウム濃度はとても重要で、この値が乱れると全身に重大な障害が生じることがあります。

通常、血液中のカリウム濃度(正常)は3.5〜5.0mEq/L(※)の範囲内にあり、3.5mEq/L以下に低下した状態を「低カリウム血症」といいます。

カリウムの役割には、体液の浸透圧調整、筋肉の収縮、神経伝達を助ける、などがあります。したがって低カリウム血症になると、消化管や筋肉、腎臓、神経系に障害を受けやすくなります。

筋力低下や筋肉痛、悪心(おしん)、嘔吐(おうと)、便秘、痙攣(けいれん)などの諸症状から、重度になると四肢麻痺(まひ)や自律神経失調、筋肉痙攣、呼吸筋麻痺、不整脈、麻痺性腸閉塞などに至ります。

低カリウム血症が起こる主な原因は次の3つが挙げられます。
(1)カリウムの摂取量が少ない
(2)体外に出ていくカリウムの量が多い
(3)血液中から細胞内にカリウムが取り込まれてしまう

カリウムは普通の食事で欠乏する事はありません。
夏バテの原因の一つである「低カリウム血症」は、夏場に大量の汗をかき、カリウムが汗とともに失われてしまうため、と考えられています。

  • mEq/L:溶液1リットル中の溶質の当量数

高カリウム血症とは

血液中のカリウム濃度の正常範囲は3.5〜5.0mEq/Lですが、5.5mEq/L以上になると高カリウム血症と診断されます。腎臓が正常に機能しているときは、多くのカリウムを摂取しても尿とともにカリウムが排泄されます。しかし、腎不全など、腎臓が上手く機能しなくなるとカリウム濃度が高くなり、高カリウム血症となります。

高カリウム血症になると、悪心、嘔吐などの胃腸症状、しびれ感、知覚過敏、脱力感などの筋肉・神経症状、不整脈などが主な症状として現れます。カリウム値が7〜8mEq/Lを超えると突然心臓の機能に異常が出るなどの危険性が生じます。

高カリウム血症の原因には次のようなことが挙げられます。
カリウムを多く含む食品の摂りすぎ
細胞内のカリウムが血液中へ移動
腎臓のカリウム排泄障害

腎機能が低下してきた場合には、カリウム制限などの食事療法を行うことにより、カリウムの上昇を抑えます。
すべてを制限すれば良いというものではなく、必要量は摂るなど、食事療法の正しい方法を理解して実践していくことが大切です。

腎臓病の1つにADPKD(常染色体優性多発性嚢胞腎)という遺伝性の病気があります。腎機能を低下させる遺伝性の腎臓病について、気になる方、知りたい方はここをクリック。