腎臓の「遺伝性の病気」のいろいろを知ろう
[監修]東京女子医科大学 血液浄化療法科 特任教授 土谷 健 (つちや けん)先生プロフィール
たくさんの種類がある「遺伝性の病気」
遺伝子の変化が原因となって発症する病気を総称して、「遺伝性の病気」といいます。
遺伝性の病気は、「遺伝病」と呼ばれることもあります。
これには「親から子に伝わる(遺伝)もの」だけでなく、「突然起こるもの」も含まれます。
「突然起こる」遺伝性の病気は、放射線や化学物質などの外的な作用によって起こることが知られています。
「多発性のう胞腎」は、親から子に伝わる遺伝性の病気に分類されますが、まれに、突然変異で発症する孤発例(※1)もあります。
身近な「親から子に伝わる」遺伝性の病気には、多発性のう胞腎以外にも、一部の乳がん(※2)、一部の難聴(※3)、色覚異常(※4)など、たくさんの種類があります(表)。
- ※1 孤発例:家族内に同じ病気の人がいないこと
- ※2 乳がん:乳房にがんが認められる病気
- ※3 難聴:耳が聞こえにくい状態の病気
- ※4 色覚異常:色に対する感覚が正常とは異なる病気
遺伝性の腎臓病
腎臓病としては「多発性のう胞腎」があげられます。
「多発性のう胞腎」は、遺伝の法則によって、「常染色体優性多発性嚢胞腎」(ADPKD)と「常染色体劣性多発性嚢胞腎」(ARPKD)に分類されています。
遺伝性の病気は、大きく分けて「優性遺伝」と「劣性遺伝」の2種類があります。これは優れている、劣っているという意味ではありません。両親から1つずつもらう遺伝子対の、片方の遺伝子に異常があっても発症してしまう場合は優性、両方の遺伝子対に異常がないと発症しない場合を劣性といいます。このため、劣性の場合はより発症する可能性は低くなります。
ADPKDは、病気を引き起こす遺伝子として「PKD1」と「PKD2」がありますが、ADPKDの患者さんの80%が「PKD1」、15%が「PKD2」、残りの5%が両方又はその他の遺伝子に異常があると言われています(図)。
遺伝する確率は、両親のいずれかがADPKDの場合、50%です。これは確率ですので、2人の子供がいれば1人は発症しないということではなく、2人とも発症してしまうことも、1人も発症しないこともありえます。
一方、ARPKDは「PKHD1」という遺伝子の異常によって発症します。
劣性遺伝ですので、両親いずれもが遺伝子異常を持っている場合に、異常のある遺伝子を両親ともどもから子供が受け継いだ場合のみ、発症します。
腎臓病の1つにADPKD(常染色体優性多発性嚢胞腎)という遺伝性の病気があります。腎機能を低下させる遺伝性の腎臓病について、気になる方、知りたい方はここをクリック。