本コンテンツは腎臓病食の一例を紹介しております。摂取可能な栄養量については、患者さんごとに異なっております。ご自身が摂取可能な量については、主治医にご相談ください。
「特別な日の腎臓病食」冬編の今回は、オーヴェルジュ エスポワールのシェフ・藤木さんに、ズワイガニやユリ根、アンコウ、ウズラなど冬の味覚を取り入れた、華やかなフレンチのコース料理をご考案いただきました。旨みのぎゅっと詰まった食材を存分に用いながらもタンパク質や塩分に配慮した、目も舌も心も満たしてくれる温かなメニューをご紹介いたします。
トータルで栄養量を調整することで、冬の味覚が生きるコース料理が完成
タンパク質、塩分、カリウム、リンなどの量を制限しながらも、コース全体を見渡して栄養量を調整することで、アンコウやワカサギをはじめ、冬ならではの選りすぐりの食材を取り入れたコース料理が完成しました。
遊び心を大切にすることで、お食事がより一層楽しく
食感の異なる素材を組み合わせることで、口に入れたときの融合を楽しんでいただけるようにしたり、盛り付け方に遊び心を加えたりするなど工夫をしました。大切なお食事のひとときがより一層楽しい時間になるように知恵を絞っています。
ズワイガニとユリ根のタルトレット
ほくほく感とサクサク感が融合
まずは突き出しであるアミューズとして、ズワイガニとユリ根を使ったタルトレットをご紹介します。手でつまんで、気軽に召し上がっていただくイメージで作りました。ズワイガニが持つ味わいとユリ根のほくほく感、パイ生地のサクサク感が口の中で一体となり、旨みが広がります。
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<材料>
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この料理の栄養量
エネルギー | 79.78 kcal |
タンパク質 | 1.74 g |
塩分 | 0.19 g |
ナトリウム | 73.23 mg |
カリウム | 81.82 mg |
リン | 17.83 mg |
水分 | 14.97 g |
調理のポイント
ユリ根は、カニとあわせた際に一体感が出ることを意識しながら切ります。ズワイガニは、旨みの詰まった煮汁も使います。あつあつで召し上がってもらえるように、仕上げで加熱しますので、パイ生地を焼く段階で焦げないように注意することが大切です。
材料
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ズワイガニ 水煮缶詰
5 g
ユリ根(生)
10 g
白こしょう
0.05 g
チャービル
0.1 g
パイ生地
12 g
オリーブ油
1 g
- 作り方
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1パイ生地を型に合わせて延ばす。フォークで数か所に穴をあけて型に詰め、冷蔵庫で1時間休ませる。
21に重しをして180℃のオーブンで約15分焼く。
3型からはずして冷ます。
4ユリ根は太めの千切りにし、ほくほくした食感が残るように1分ほど蒸す。
54とカニの身をボウルに入れ、白こしょうを加えて和える。
63に5を詰め、オーブンであつあつになるまで温める。
7オーブンから取り出した6にオリーブ油をかけ、チャービルを載せる。
国産ワカサギのエスカベッシュ クレソンのサラダ仕立て セリのソース
カリッと揚げたワカサギに生き生きとしたグリーンを添えて
エスカベッシュとは、一度フライにしたものを酸味のあるソースに漬ける南蛮漬けのような料理です。カリッと揚げたワカサギに、さっぱりとしたセリのソースをつけ、クレソンの間を泳ぐように盛り付けます。極寒の湖から釣り上げたワカサギと、厳しい冬でも湧水で青々と育つクレソンをあわせ、生命力溢れる一皿に仕上げました。
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<材料>
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この料理の栄養量
エネルギー | 159.38 kcal |
タンパク質 | 1.98 g |
塩分 | 0.81 g |
ナトリウム | 327.25 mg |
カリウム | 70.81 mg |
リン | 48.54 mg |
水分 | 30.14 g |
調理のポイント
セリとドレッシングをミキサーで合わせる際は、セリがペースト状になるまでしっかり混ぜてください。新鮮なワカサギは表面に特有のぬめりがあるので、卵を使わなくてもパン粉がつきます。低タンパクパン粉を使うことで、タンパク質をコントロールできます。
材料
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ワカサギ
10 g
塩
0.2 g
白こしょう
0.1 g
フレンチドレッシング
15 g
調合油
5 g
クレソン
10 g
セリ(葉と茎)
5 g
米パン粉(低タンパクパン粉)
10 g
- 作り方
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1セリをドレッシングと一緒にミキサーにかける。
2クレソンは食べやすい大きさにちぎっておく。
3ワカサギに塩、白こしょうをして、パン粉をつけてカリッと揚げる。
4ワカサギの半分くらいまで1をつける。
54とクレソンを皿に盛る。
松本一本ネギのグラタンスープ
ネギの甘みがギュッと詰まったあつあつスープ
松本一本ネギは、長野県の伝統野菜の一つで、加熱すると甘さと柔らかさが際立ちます。グラタンスープには通常、玉ネギを使いますが、今回はさっぱりと仕上がる松本一本ネギを使いました。ご家庭でも長ネギ(根深ネギ)で試してみてください。
炒め油にラードを使っているほか、メイン料理の付け合わせに用いた人参の煮汁をコンソメの代わりに用いることで、タンパク質を抑えながらもコクのある味わいを実現しました。
この料理の栄養量
エネルギー | 116.3 kcal |
タンパク質 | 1.1 g |
塩分 | 0.91 g |
ナトリウム | 363 mg |
カリウム | 103.06 mg |
リン | 23.66 mg |
水分 | 253.78 g |
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<材料>
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調理のポイント
“タンパク質の塊”であるコンソメの量を減らすため、別の料理で出た煮汁を活用しています。煮汁を捨てずに生かすことで、コース料理全体で栄養量を調整することができます。ネギは、辛抱強くじっくり炒めて、甘みを出すことがポイントです。
材料
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松本一本
50 g
白こしょう
0.1 g
水
200 g
低タンパクパン
15 g
ラード
5 g
チキンコンソメ
2 g
- 作り方
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1ネギは外側の皮を1枚むき、斜めに薄くスライスする。
2鍋にラードと1を入れ、弱火でじっくりと炒める。
3「豊橋産ウズラと雑穀のカイエット」で出た人参の煮汁を鍋ごととっておき、水を加えて加熱し、鍋はだから旨味をこそげとる。
(単品でつくる際は、鍋に無塩バター5gと水230gを入れて加熱してベースをつくる:分量外)42の鍋に3とチキンコンソメ、白こしょうを加え、弱火で煮込む。
5低タンパクパンを小さめの角切りにする。
6深めの器に4のスープを注ぎ、5を散らし少し押し込む。
7オーブンで表面を香ばしく焼く。
駿河湾産アンコウのボンファム
寒さを吹き飛ばす“おばあちゃんの温もり”
ボンファムとは直訳すると「良きおばあちゃん」のこと。もともとはヒラメをソテーして、卵黄とバターで作ったオランデーズソースをかけ、グラタン風に皿ごと焼き上げた料理のことをこう呼びます。家庭でおばあちゃんが作ってくれる料理という意味から、ボンファムと呼ばれるようになったと言われています。今回は、アンコウとミカンを使い、味噌と赤ワインを合わせたソースで“ボンファム風”に仕上げてみました。寒い時期にぴったりのあつあつの一品です。
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<材料>
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この料理の栄養量
エネルギー | 145.57 kcal |
タンパク質 | 3.42 g |
塩分 | 0.52 g |
ナトリウム | 206.62 mg |
カリウム | 127.74 mg |
リン | 49.18 mg |
水分 | 59.62 g |
調理のポイント
白菜は、盛り付けた後にも加熱することを考慮し、シャキシャキとした食感が少し残る程度に蒸してください。また、アンコウは火が通りにくいのでしっかりと加熱することが重要です。
材料
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アンコウ
20 g
白菜
15 g
温州ミカン
15 g(2房程度)
白こしょう
0.1 g
塩
0.1 g
チャービル
0.2 g
*ソース
35%生クリーム
15 g
無塩バター
5 g
黒こしょう
0.05 g
赤ワイン
5 g
低タンパクみそ
7 g
- 作り方
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1アンコウは4枚にスライスし、塩、白こしょうをする。
2白菜を蒸す。
3ミカンは薄皮をむき、2房を4枚にスライスする。
4ソースの材料である生クリーム、バター、赤ワイン、出汁入りみそをボウルに入れ、湯煎にかける。少しとろみが出て、ふわっとした感じになるまで泡立て器でかき混ぜる。
5ボウルを湯煎からはずし、ミカンと黒こしょうを加える。
65のミカンはソースをからめて取り出し、蒸した白菜も同様にする。
7耐熱皿に白菜とソースを敷き、その上にアンコウとミカンを盛る。
8オーブンでしっかり焼き色が付くまで焼く。
9チャービルを飾る。
豊橋産ウズラと雑穀のカイエット トリュフのソース 冬人参のヌイユ添え
ジビエの雰囲気を楽しめるワイルドな一品
カイエットとは、お肉をお肉で包んで焼き上げる料理のことです。ここでは、中のお肉の代わりに十七雑穀ミックスと人参を使い、ウズラで包んで焼き上げ、黒トリュフのソースで仕上げました。また、ヌイユ(ヌードル)は、人参を麺のようにしたものです。「オーヴェルジュ エスポワール」の得意とする、ジビエ(狩猟によって捕獲された鳥獣肉)料理の雰囲気を味わってもらいたいと思い、このメニューを考案しました。
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この料理の栄養量
エネルギー | 272.08 kcal |
タンパク質 | 7.21 g |
塩分 | 0.43 g |
ナトリウム | 155.67 mg |
カリウム | 202.82 mg |
リン | 49.55 mg |
水分 | 153.32 g |
調理のポイント
でんぷん米は水で戻さずに、調味液(スイートワイン・洋風だし)で戻し、旨みを閉じ込めます。水分が残らないようにしっかりと蒸し上げます。盛り付けの際に、丸めた人参がウズラでつぶれないように、人参を煮る際には柔らかくなりすぎないように注意が必要です。
材料
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ウズラ
30 g(半身程度)
塩
0.1 g
網脂(豚などの内臓まわりにある網状の脂)
10 g
*詰め物
人参
5 g
でんぷん米 1/20
5 g
十七雑穀ミックス
5 g
塩
0.1 g
*付け合わせ
人参
15 g
無塩バター
5 g
水
30 g
*詰め物出汁
スイートワイン
20 g
洋風だし
5 g
水
10 g
*ソース
スイートワイン
30 g
洋風だし
5 g
トリュフ
2 g
白こしょう
0.05 g
塩
0.1 g
水
25 g
- 作り方
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1ウズラは観音開きにさばいて手羽元と大腿骨をとる。爪の部分は中指を残し、ほかは切りとる。中指の爪は切る。
2焼いたときに縮まないようにモモの部分に切り込みを入れておく。
3肉側に塩をふっておく。
4ボウルにでんぷん米、十七雑穀ミックス、小さく角切りにした人参、塩、アルコールを飛ばしたスイートワイン、洋風だし、水を入れ、2時間以上おいて吸水させる。
54にラップをして蒸し器で20分蒸す。蒸しあがったらラップをしたまま粗熱をとる。
65をウズラの肉で包み、さらに網脂で包む。
7フライパンで6の表面にこんがりと焼き色を付けてから、オーブンに入れて火を通す。
8ソースの材料であるスイートワイン、洋風だし、トリュフ、水、塩、白こしょうを鍋に入れて、しっかりと煮詰める。
付け合わせを作る
9鍋にバターと水を入れ、3cm幅にして薄くスライスした人参を入れる。少し食感が残る程度まで煮て、味を含ませる。
※人参の煮汁は「松本一本ネギのグラタンスープ」に使用するので、鍋ごととっておきます。109を器の真ん中に丸めて載せ、その上にウズラの足が上になるように盛る。
11器の回りとウズラにソースをかける。
エスポワールスペシャリテ 栗のモンブラン
和栗をふんだんに使った贅沢スイーツ
和栗をふんだんに使ったモンブランです。当店の周辺で採れた栗を主に使っています。栗のペーストの割合を生クリームより多くすることで、しっかりとした味わいを実現しました。
この料理の栄養量
エネルギー | 233.85 kcal |
タンパク質 | 1.7 g |
塩分 | 0.04 g |
ナトリウム | 8.5 mg |
カリウム | 169 mg |
リン | 37.94 mg |
水分 | 33.21 g |
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<材料>
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調理のポイント
手間を惜しまず裏ごしすることで、なめらかな口あたりに仕上がります。
材料
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日本栗 (ゆで)
30.8 g
上白糖
8.4 g
ラム
0.3 g
ブランデー
0.3 g
ホイップクリーム 乳脂肪
35 g
シナモン 粉
0.1 g
飾り用
粉糖
0.1 g
ココアパウダー
0.1 g
ミント
1 枚
※上記材料は、1人分の分量です。何人分かをまとめてお作りになることをおすすめします。
- 作り方
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1鍋に栗、上白糖、シナモン、水(分量外)を入れ、じっくり煮て栗を柔らかくする。
2栗が柔らかくなったらポテトマッシャーで潰し、木べらで練り上げる。
3触ってみて手につかなくなったところで、ブランデーとラムを入れ、裏ごしする。
43にラップをして冷蔵庫で一日おく。
5ホイップクリームと4を合わせ、泡だて器で角が立つまで混ぜる。
6モンブラン用の口金をセットした絞り袋に5を入れ、器に絞る。
76にココアパウダーと粉糖を振りミントを飾る。
スプーンで表現するプチフール
6種類のフルーツを堪能できる“魔法のスプーン”
喉にいいと言われるカリン、完熟したキウイ、食用のホオズキ、これから旬を迎えるイチゴなど、6種の果実のハーモニーを楽しめる一品です。フルーツはカリウムが多く含まれるため、積極的に摂ることはできませんが、少量でも遊び心をプラスして味わうことで満足感が得られます。
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<材料>
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この料理の栄養量
エネルギー | 8.78 kcal |
タンパク質 | 0.02 g |
塩分 | 0 g |
ナトリウム | 0.06 mg |
カリウム | 15 mg |
リン | 1.26 mg |
水分 | 6.9 g |
調理のポイント
ペーストなどは1人分だと量が少なく作りにくいため、量を増やして、ご家族で楽しまれてはいかがでしょうか。
材料
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カリン
1 g
グラニュー糖
0.5 g
キウイフルーツ
1 g
食用ホオズキ
1 g
洋ナシ 生
1 g
赤ワイン
1 g
グラニュー糖
0.5 g
リンゴ
2 g
イチゴ
1 g
- 作り方
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1カリンは、スライスしてゆでてから、別の鍋に移して水とグラニュー糖を加えて柔らかくなるまで煮たものをミキサーにかけて裏ごしする。
2キウイフルーツは包丁でたたいてペースト状にする。
3ホオズキは皮付きの実を包丁でたたき、ペースト状にする。
4耐加熱性の真空パックまたはジッパー付きのビニール袋に、くし切りにした洋ナシとアルコールを飛ばした赤ワイン、グラニュー糖を入れ、30分間75℃のお湯に浸けてから、氷水で冷やす。
54のパックから洋ナシを取り出し、小さな角切りにする。
6リンゴは1個当たり1gになるように、2個を丸くくり抜く。
7イチゴは小さな角切りにする。
8スプーンの柄の方からペースト状のホオズキ、キウイ、カリンを並べ、その上に角切りのイチゴ、リンゴ、洋ナシの順で盛り付ける。
ご家庭でも、日々の食事を作る際に参考にされてみてはいかがでしょう。