本コンテンツは腎臓病食の一例を紹介しております。摂取可能な栄養量については、患者さんごとに異なっております。ご自身が摂取可能な量については、主治医にご相談ください。
今回の「特別な日の腎臓病食〜夏編〜」では、食欲のないこの時期に目も舌もご満足いただける涼しげなコース料理をオーヴェルジュ エスポワールのシェフ・藤木さんにご考案いただきました。タンパク質や塩分を極力控え、ご家庭の料理にも応用できるよう考えられた、オリジナリティ溢れるメニューをお楽しみください。
栄養計算に細心の注意を払いながらも、オリジナリティとおいしさを追求
食事制限が必要な腎臓病の方にも、本格的なフレンチを楽しんでいただきたいと、今回のメニューもチームで知恵を絞り、試行錯誤しながら考案しました。タンパク質、塩分、カリウム、リンなどの制限がある中、旬の食材の味を最大限に活かし、いかにおいしく、いかにオリジナリティを出していくかが大きな課題でした。今回のメニューでは香りや酸味を総動員して、どなたにもご満足いただける味わいを実現することができました。
ご家庭でも、少し手間はかかりますが取り入れることができる範囲だと思いますので、参考にしていただき、旬の素材を楽しんでいただけたらと思っています。
野菜や果物をふんだんに取り入れながらも、制限量内で調整
本格フルコースでありながら、季節の食材をこんなスタイルで味わえるとは!という意外性も含んでおります。今まで体験したことのない驚きとともに、夏を存分に感じられるメニューをお楽しみください。
アサリのブルスケッタ 青海苔の香り
素材が持つ塩分だけで、しっかりとした味わいが楽しめる一品
低タンパクの小麦で作ったパンは、グルテンが少ないため焼きあがった時の膨らみが弱くなりがちです。それを克服するため、パンは長時間かけて熟成させ、表面をこんがり焼いて、より旨みを引き出せるよう工夫しました。
低タンパクマヨネーズのコクと、青海苔とアサリが持つ塩分のみで十分に味が出ますので、制限がありながらも、しっかりとした食べごたえを感じていただけます。
この料理の栄養量
エネルギー | 83.2 kcal |
タンパク質 | 1.17 g |
塩分 | 0.27 g |
ナトリウム | 107.09 mg |
カリウム | 24.13 mg |
リン | 17.01 mg |
水分 | 13.09 g |
調理のポイント
アサリを焼きすぎると硬くなるので、加熱時間に注意します。バターが溶ける程度で十分です。
材料
-
自家製低タンパクパン
10 g
青海苔(乾燥)
1 g
アサリ
5 g
無塩バター
3 g
プロチョイスマヨネーズ
1 g
- 作り方
-
トースターで低タンパクパンの両面をこんがりと焼く。
マヨネーズを焼いたパンの片面に塗り、アサリをのせて海苔バター(バターと海苔を合わせたもの)をのせる。
をトースターで焼く。
皿に盛り付ける。
完熟トマトの冷製パスタ仕立て ヨーグルトクリームを添えて
完熟トマトと寒天の清涼感が、目にも涼しい夏ならではの一皿
カリウムが多いということで敬遠されがちなトマトですが、工夫次第でメニューに取り入れることができます。薄くスライスして量を調整し、彩りとして加えてみるとよいでしょう。極薄にスライスした少量の生ハムと、低タンパクでのど越しの良い寒天をパスタ状に切って添えるだけで、ご家庭でも簡単に涼しげな一品を作ることができます。生クリームはタンパク質は牛乳より少なめですが、必要なカロリーを摂取することができます。ヨーグルトクリームは上からかけていただいても、付けながらでもおいしく召し上がっていただけます。
この料理の栄養量
エネルギー | 108.87 kcal |
タンパク質 | 1.6 g |
塩分 | 0.34 g |
ナトリウム | 132.68 mg |
カリウム | 166.91 mg |
リン | 37.32 mg |
水分 | 74.84 g |
-
<材料>
-
5
-
6
-
8
調理のポイント
完熟したトマトを使うことで、酸味と甘み、旨味が際立ちます。
生クリームに水切りしたヨーグルトを混ぜると酸味が加わるため、塩分が少なくても気になりません。
材料
-
トマト
10 g
バジル
0.5 g
豚生ハム
2 g
生クリーム
15 g
ヨーグルト
10 g
オリーブ油
1 g
果汁用トマト
50 g
寒天
0.8 g
ヨーグルト用 塩
0.1 g
トマト果汁用 グラニュー糖
3 g
トマト果肉用 塩
0.1 g
ディル(ハーブ)
1 g
- 作り方
-
1トマトは皮をむき、種を取って薄くスライスし、塩を振っておく。
2トマトをミキサーにかけ、ペーパーで漉して50g相当の澄んだトマト果汁を作る。これにグラニュー糖を合わせ、しっかりとグラニュー糖を溶かす。火にかけて少し温めた後、寒天を加えて混ぜる。
32の液が少し沸騰してきたところで、グラニュー糖が溶けているのを確認して容器に入れて冷やす。
4オリーブ油とバジルのみじん切りを合わせる。
5ヨーグルトと泡立てた生クリームをさっくりと合わせ塩をする。
6冷やして固まった3をところてん状に切る。生ハムは4〜5cmの棒状に切る。
7スライスしたトマトを皿の中心に敷き、その上にところてん状に切った6を小高く盛り、上から生ハムを散らす。
8盛り付けたものに4とディルを散らして彩りと香りを添える。
95をグラスに注ぎ入れる。
高原キャベツのラグー フリット仕立て
揚げているのに、さっぱりと旬のキャベツの味を楽しめる
高原キャベツのおいしい季節、ご家庭でも多彩にお楽しみいただきたい食材です。今回は、地元・茅野市の高原キャベツを使用。洋風だしでしっかり煮込んだ後、低タンパクのパン粉をまぶして油で揚げたフリット仕立てにしてみました。キャベツは茹でこぼして下処理をすることでカリウムを減らすことができます。
キレのある味に仕上げるために吹きかける赤ワインビネガーとバルサミコ酢のブレンド酢が味の決め手になります。ご家庭では赤ワインビネガーやバルサミコ酢に限らず、香りのあるいろいろなお酢でお楽しみください。
この料理の栄養量
エネルギー | 87.43 kcal |
タンパク質 | 1.32 g |
塩分 | 0.2 g |
ナトリウム | 142.62 mg |
カリウム | 157.06 mg |
リン | 41.44 mg |
水分 | 88.28 g |
-
1
-
4
-
5
調理のポイント
キャベツは箸で切れるほど柔らかくなるまでだし汁で煮含めると、フリットにしたときに歯切れよく仕上がります。キャベツに十分味が浸みているのでソースや余計な調味料が必要ありません。
材料
-
キャベツ
50 g
なたね油
5 g
洋風だし
40 g
白こしょう
0.03 g
低タンパクパン粉
10 g
柑橘オイル
2 g
バルサミコ酢
2 g
赤ワインビネガー
1 g
- 作り方
-
1キャベツは下茹でし、洋風だしで柔らかくなるまでしっかりと煮る。
21のキャベツを取出し、水気をしっかりと取る。
32をロール状にくるくると巻き、冷凍庫で表面を少し固める。
4キャベツに赤ワインビネガーとバルサミコ酢を合わせたものを吹き付ける。キャベツ全体にパン粉をまぶしさらに酢をふきかけた後、揚げる。
5揚がったら斜めに切って皿に盛り付け、柑橘オイルを周りにかける。
木島平産大イワナのミキュイ 野菜とサフランの香り
身のしまったイワナを、野菜の食感や香りで引き立て一層おいしく
地元長野の急流で育ったイワナを極薄にスライスし、熱々のスープの上にのせたミキュイ(ちょっと加熱された半生状態)です。食感が少し残る程度に煮込んだ野菜に、サフランで香りと色をつけて甘酸っぱいソースを作り、その上にイワナをのせていただきます。
ご家庭で試される場合には、これからが旬のスズキや真鯛などの白身魚でもいいでしょう。ただ、言うまでもなくタンパク質には気を付けなければならないので、今回イワナは18gのみ使用。この量であっても、凍らせて極薄にスライスすることで視覚的な量感を演出しています。低タンパク食をよりおいしく楽しんでいただくには、香りや味の深みを高める工夫が必要です。是非ともご家庭でも取り入れてみてください。
この料理の栄養量
エネルギー | 56.62 kcal |
タンパク質 | 4.54 g |
塩分 | 0.13 g |
ナトリウム | 12.32 mg |
カリウム | 131.85 mg |
リン | 55.55 mg |
水分 | 142.07 g |
-
3
-
4
-
5
-
18<完成>
調理のポイント
イワナの身を一度凍らせておき、半解凍の状態でスライスすると、きれいに薄く切ることができます。
材料
-
セロリ
10 g
玉ねぎ
10 g
いわな
18 g
白ワイン
10 g
ベルモット
5 g
サフラン
1 g
フュメ・ド・ポワソン(魚のだし)
50 g
水
50 g
- 作り方
-
1鍋に白ワイン、ベルモット、フュメ・ド・ポワソン、サフラン、水を入れる。
2セロリ、玉ねぎをスライスしてに入れる。
32を火にかけ、セロリ、玉ねぎに火が通ったところで火を止める。
*少し食感が残る程度に火を通す。4薄くスライスしたイワナを、ラップの上にうろこ状に丸く並べていく。その後、ラップをかぶせ冷凍庫で凍らせる。
5熱い皿に3を汁ごと入れ、その上にをラップからはがし、汁の上にかぶせるようにのせる。
塩尻市産黒毛和牛舌のソーセージ 長和町産パプリカとオリーブのマリネ添え
メルローの香りに包まれ、口いっぱいに広がる肉の旨み
塩尻のワイナリーから取り寄せたメルローの枝を炭に加えて燻すことで、香ばしく仕上げた牛タンのソーセージです。腎臓病の方は、タンパク質制限から肉をたくさん召し上がることはできません。限られたひと口をしっかり楽しんでいただけるよう、香りや食感を工夫し、豊かな味わいを追求しました。
今回は、40gの牛タンを包丁で食感が残る程度に刻み、牛タンの旨みを浸み込ませたでんぷん米をミキサーしたものを混ぜ込んで中身を作りました。肉の量が限られている場合、でんぷん米を加えることで食べた時の満足感が高まります。ご家庭でひき肉料理などを作る際、このテクニックを応用してみてはいかがでしょうか?
この料理の栄養量
エネルギー | 267.51 kcal |
タンパク質 | 6.89 g |
塩分 | 1.11 g |
ナトリウム | 429.53 mg |
カリウム | 183.32 mg |
リン | 80.66 mg |
水分 | 100.48 g |
-
6
-
8
-
9
-
12
調理のポイント
ソーセージは炭火で炙って香ばしさを出すだけでなく、ブドウの枝をくべて香りを付けます。ご家庭では炭の上にサクラやリンゴなどのスモークチップを使用しても、良い香りがつきます。
材料
-
なす
10 g
ピーマン赤
10 g
ピーマン黄
10 g
オリーブ黒
5 g
しめじ
10 g
牛たん
40 g
野菜ソテー用 オリーブ油
3 g
ソース用 オリーブ油
5 g
ソーセージソテー用 オリーブ油
3 g
マスタード
5 g
でんぷん米
10 g
浸水用 水
30 g
グロセル(フランス産海水塩)
0.4 g
塩
0.4 g
ケーシング
適量
- 作り方
-
1でんぷん米をミキサーで細かくし、分量の水で一晩浸漬しておく。
2牛たんは軽く炭であぶり香りをつける(火を入れるわけではない)。その後、冷蔵庫で冷ます。
32を粗くみじん切りにする。
4しめじを粗くみじん切りにしてレンジで火を通す。
5でんぷん米、牛たん、しめじ、グロセルをボールに入れなじませる。
65をケーシングに詰め、両端を縛る
76を蒸し器で10分間加熱する。火を止めて10分間余熱で火を入れる。
8蒸あがったところで取り出し、フライパン(網)で表面をこんがりと焼く。
9付け合せを作る。ピーマン、なすを千切りにする。オリーブはみじん切りにする。
10フライパンにオリーブ油を敷き、ピーマンとなすを炒める。
オリーブを入れてからめる。
皿にマスタードとオリーブ油で作ったソースを敷き、そこにソーセージ、の付け合せを盛り合わせる。
川中島白桃のスープ 八角風味
懐かしいあの桃のジュースを彷彿させる、冷たいスープ
中華料理でおなじみのスターアニス(八角)を、桃に合わせた夏におすすめの一品。桃は川中島白桃を使用し、子供の頃に飲んだ桃のジュースの懐かしい味を再現しようと、開発してみました。香りを増すために皮は捨てないでミキサーに入れ、最後に漉すのがポイントです。ご家庭でも簡単にできるので、ぜひお試しください。
この料理の栄養量
エネルギー | 90.65 kcal |
タンパク質 | 0.62 g |
塩分 | 0.01 g |
ナトリウム | 3.4 mg |
カリウム | 134 mg |
リン | 17.6 mg |
水分 | 67.04 g |
-
<材料>
-
9
-
3
-
4
調理のポイント
完熟させた桃を使うと芳醇な香りが際立ちます。
材料
-
生クリーム
10 g
グラニュー糖
5 g
桃
60 g
桃(果肉用)
10 g
八角
4片
- 作り方
-
1皮がついたままの桃60gと、生クリーム以外の材料を合わせてミキサーで回す。
2スープ状になったところで生クリームを加える。
を漉す。
カップに10gの果肉を入れ、を注ぎ、その上に八角を添える。
チョコレートのアイスキャンディー
低タンパクチョコレートで作る、ひと口スイーツ
低タンパクのチョコレートを使ったお茶請けです。お風呂上がりにアイスを食べたいと思ったときなどに、重宝するのではないでしょうか?冷凍庫の製氷皿を使ってご家庭でも簡単に作ることができますので、ぜひお試しください。タンパク質も0.6gと控えめなので安心してお召し上がりいただけます。
この料理の栄養量
エネルギー | 241.95 kcal |
タンパク質 | 0.6 g |
塩分 | 0.03 g |
ナトリウム | 7.35 mg |
カリウム | 40.2 mg |
リン | 25.2 mg |
水分 | 7.43 g |
-
<完成>
調理のポイント
低タンパクのチョコレートはあっさりしていますが、脂肪分の高い生クリームを加えることでコクを出すことができます。
材料
-
生クリーム
15 g
低タンパクチョコレート
30 g
- 作り方
-
チョコレートを溶かし、そこに温かい生クリームを少しずつ加えていく。
型にクッキングシートを敷いて、を流し冷凍庫で冷やし固める。