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第15回 藤沢市腎友会 会長 星川俊道さん

日々の節制は旅行という楽しみのための貯金だと考えています

日々の節制は
旅行という楽しみのための
貯金だと考えています

積極的に情報収集を行い、得意な料理で日々の節制もしっかりと達成している星川俊道さん。腹膜透析を続けながら11年間携わってきた教職を離れた今、腎友会での情報発信と大好きな旅行を生きがいとするアクティブな生活を送っていらっしゃいます。

積極的に情報収集を行い、得意な料理で日々の節制もしっかりと達成している星川俊道さん。腹膜透析を続けながら11年間携わってきた教職を離れた今、腎友会での情報発信と大好きな旅行を生きがいとするアクティブな生活を送っていらっしゃいます。

事実を知りたくなくて、目を背けていた頃もありました。 事実を知りたくなくて、目を背けていた頃もありました。

温泉や夏祭り、桜の景勝地巡りなどの国内旅行はもちろんのこと、イギリスやベトナム、ロシア、アイルランドなど、この15年間で実に11もの国々を旅したという星川さん。そのアクティブさには驚かされますが、15年前の2002年より、星川さんは腹膜透析を開始しています。「旅行のための情報を正しく集めれば、あとは本人のポジティブな気持ち一つでどこにでも行けます。家に閉じこもったり、何かを我慢したりする必要はないと思います」と語るその言葉は頼もしいばかりです。
教員だった星川さんが多発性のう胞腎(ADPKD)と診断されたのは2000年9月のことでした。職場の健康診断でエコー検査を受け、腎臓にのう胞が見つかったことに始まります。当時、すでに星川さんのお母様(1985年死去)とお兄様がADPKDと診断され、透析治療を受けていました。そのため、疾患に対する知識は少なからず持っていましたが、『自分は大丈夫』という思いもあったといいます。「親がADPKDの場合、子どもに遺伝する確率は2分の1と聞いていました。私の場合は兄がすでに診断を受けていたことで、『それならば自分は大丈夫だろう』と高をくくってしまっていたのです。しかし、今思えば完全に安心していたわけではなく、決定的な事実を知りたくなくて、目を背けていたのかもしれません」。

健康診断の翌月、星川さんの元に届いた検査結果表には“要再検査”の文字があり、クレアチニン値の表示は6.7 mg/dL。すぐにADPKDの専門医を訪ねると、クレアチニン値は7.3 mg/dLとさらに上昇しており、「あと半年ほどで透析が必要である」と宣告されました。星川さんは、「出なければよいと思っていた結果が出て、正直戸惑いはありました。しかし、『仕方がない、遺伝とはこういうものだ』と飲み込みました。幸いなことに妻が大らかなタイプで、「仕方がないね」と動じずに受け入れてくれたので、必要以上に深刻にならずに済んだのかもしれません」と当時を振り返ります。
“半年で透析”と宣告されたものの、その後の食事療法を徹底し、1年以上先延ばしにすることができました。星川さんの場合、保存期と呼ばれる透析に至るまでの準備期間では、1日のたんぱく質摂取量を20gと非常に厳しく制限されたそうです。しかし、ADPKDと診断される以前から、共働きの奥様とは半々で食事をつくっており、料理は苦手ではなかったといいます。「職業柄か、自分で調べて計画を組み立てていくという作業は得意だったため、栄養の管理もきちんとできたと思っています。今でも食事制限はしていますが、腹膜透析を開始したことで保存期よりも緩やかな制限で済むようになり、楽に感じているくらいです。」

やりたいことを諦める必要はありません。正しく情報を集めれば道は開けます。 やりたいことを諦める必要はありません。正しく情報を集めれば道は開けます。

腹膜透析を選択した星川さんは、その後11年間教員の仕事を続けました。職場は神奈川県藤沢市にある神奈川県立総合療育相談センターという施設で、神奈川県立養護学校の訪問学級でした。さまざまな障害・疾患で入院している子どもの学級でした。そのため医療用の部屋もあり、そこに腹膜透析用の機材を置いて、昼休みなどに透析液のバッグ交換を行うことができたそうです。職場での理解は得られたものの、PKDは外からわかりづらい病気で障害とは思われず、周りの理解を得ることに苦労されたこともあるそうです。
2013年に退職してからは、藤沢市の腎友会で代表を務めながら、腎臓疾患の患者さんに向けた情報発信を行っています。「診断から17年、腹膜透析開始から15年が経ち、元気に過ごせている自分だからこそ伝えられることがあるのではないか、それが私の役目ではないかと思っています。以前と比べてインターネットによる情報収集が楽になりましたが、それでも全ての患者さんが正しい情報にアクセスできているかどうか。ADPKDという疾患の特徴、治療法、そして食事制限一つ取っても、正しく認識できている人ばかりではないと思います。会の活動を通じて、少しでも正しい情報発信ができればと考えています。」
腎機能を温存する治療が誕生し、ADPKDの早期診断は大きな意味を持つようになったと星川さんは言います。現在、ご親族もADPKDと診断され、治療を開始しています。「私の頃には治療法がありませんでしたから、うらやましいなと思います。医療の進歩はまさに日進月歩。患者サイドからすると非常に助かっています。これでもっと前向きに疾患と付き合い、ポジティブに日々を送ることのできる患者さんが増えれば、これほど素晴らしいことはありません。だからこそ、ADPKDの正しい情報が広く一般にも伝わればよいと思っています。」

星川さんが腹膜透析を開始して15年が経ちますが、腎容積の増大なども起きておらず、順調な毎日だそうです。1日4回の腹膜透析や、塩分・リンなどの食事制限は必要ですが、これを支えているのが旅行という楽しみだと教えてくれました。腹膜透析は、事前に透析液などを旅行先に送っておけばホテルの部屋で自ら行うことができます。自由度が高く、海外旅行を楽しめることも、ADPKDと診断された人、そして透析を受けている人にも知ってほしいと星川さんは言います。「確かに、疾患があると制限は付きものです。しかし、やりたいことを全て諦めなければならないわけではありませんし、透析が人生の終わりではありません。そして、私にとっての旅行のような楽しみがあれば、日々の大変さも乗り越えることができます。普段の節制はそうした楽しみのための貯金と考えて、励みにしてはいかがでしょうか。」
北欧を中心に、まだまだ行きたい国がたくさんあると話す星川さん。腎友会での情報発信という使命も含めて忙しい日々がこれからも続きそうです。

ADPKDと診断された患者さんへのメッセージ

早く専門医と相談し、適切なタイミングでの治療を考えてほしいと思います。両親や祖父母など、身内に腎臓系疾患を持つ人がいたら、あるいは持っていた人がいたという話を耳にしたら、怖がらずに勇気を出して専門医に相談するべきです。自分は大丈夫、などと勝手な思い込みはいけません。私もそうしていれば、早めにADPKDを見つけることができたかもしれません。とはいえ、当時は治療法がなかったため、できることは限られていたでしょう。一方、今は治療法があります。知らずにいたり、あるいは目を背けて放っておいたりすることは、一番もったいないことです。正しい知識を得ること、そしてやるべきことをやること――そうすれば、疾患を必要以上に怖がることはないと思います。

早く専門医と相談し、適切なタイミングでの治療を考えてほしいと思います。両親や祖父母など、身内に腎臓系疾患を持つ人がいたら、あるいは持っていた人がいたという話を耳にしたら、怖がらずに勇気を出して専門医に相談するべきです。自分は大丈夫、などと勝手な思い込みはいけません。私もそうしていれば、早めにADPKDを見つけることができたかもしれません。とはいえ、当時は治療法がなかったため、できることは限られていたでしょう。一方、今は治療法があります。知らずにいたり、あるいは目を背けて放っておいたりすることは、一番もったいないことです。正しい知識を得ること、そしてやるべきことをやること――そうすれば、疾患を必要以上に怖がることはないと思います。

2017年10月作成
SS1709507

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