どのように診断するの?
どのように診断するの?
ADPKD(常染色体優性多発性嚢胞腎)の家族歴の問診と、画像検査で確認する嚢胞の数から診断
家族の中に腎臓病や脳出血を患っていた人がいないかどうか、問診で家族歴を確認します。腎臓に嚢胞があるかどうかは、画像検査(超音波、CT、MRIなど)により確認して診断します。
1)診断の方法は?
診断のアルゴリズムからADPKD/多発性嚢胞腎を診断
ADPKD/多発性嚢胞腎の診断と治療に関しては、ガイドライン(治療に関して適切な判断ができるように、治療の実績や最新の研究成果に基づいて作成された診療指針)が作成されています(エビデンスに基づく多発性嚢胞腎(PKD)診療ガイドライン2020)。
ガイドラインでは、診断のアルゴリズム(流れ、方法、手順)が示されています。画像検査で腎嚢胞が確認されれば、ADPKD/多発性嚢胞腎の家族歴(家族の病歴)を確認します。家族歴があって、診断基準に合致すれば、ADPKD/多発性嚢胞腎と診断されます。また、若年者の場合には診断基準に合致するだけの嚢胞が確認できない場合もあり、30歳を目安に再検査します。
ADPKD/多発性嚢胞腎の家族歴がない場合、ADPKD/多発性嚢胞腎の可能性は低くなります。ADPKD非特異的臨床所見(ADPKD/多発性嚢胞腎によく見られるものではない所見)が見られる場合は、他の病気を考慮します。

エビデンスに基づく多発性嚢胞腎(PKD)診療ガイドライン2020より改変
2)診断基準は?
家族内発生が確認されている場合、画像検査で嚢胞数を確認して診断
ADPKD/多発性嚢胞腎の診断基準は、厚生労働省の研究班(専門家による研究グループ)により作成されています(厚生労働省進行性腎障害調査研究班「常染色体優性多発性嚢胞腎診療ガイドライン(第2版)」)。
診断基準は、家族内発生が確認されている場合(ADPKD/多発性嚢胞腎患者が家族にいる場合)と、確認されていない場合に分けられています。
家族内発生が確認されている場合、超音波所見で両腎に嚢胞が各々3個以上確認されているもの、CTやMRIの所見で両腎に嚢胞が各々5個以上確認されているものがADPKD/多発性嚢胞腎と診断されます。
家族内発生が確認されていない場合は、15歳以下と16歳以上で嚢胞数の基準が異なり、他の腎臓の病気を除外して診断されます。

厚生労働省進行性腎障害調査研究班「常染色体優性多発性嚢胞腎診療ガイドライン(第2版)」より引用
3)どのような検査が行われるの?
尿検査で蛋白尿・血尿の有無を検査し、血液検査で腎機能を検討
問診で自覚症状(血尿や腹痛など)、既往歴(これまでの病歴)、家族歴を確認した後、各種検査が行われます。
- <身体所見>
- 血圧、腹囲の測定、心音、浮腫(むくみ)などを診察します。
- <尿検査>
- 蛋白尿・血尿などの有無を検査します。
- <血液検査>
- 血清クレアチニン値を測定し、推算糸球体濾過量(eGFR)を算出し、腎機能を調べます。
- <遺伝子検査>
- ADPKD/多発性嚢胞腎の遺伝子を調べることは技術的には可能ですが、原因遺伝子であるPKD1、PKD2の遺伝子検査は費用や時間がかかるため、一般的に ADPKD/多発性嚢胞腎の診断を目的とした遺伝子検査は行われていません。超音波検査などの画像検査により診断ができることも一般に遺伝子検査が行われていない理由の1つです。
ただ、悩みや不安が強い場合は、遺伝カウンセリングを受けてみるのも1つの選択肢です。
4)画像検査は?
超音波、CT、MRIで、腎臓の大きさや嚢胞の数・大きさを確認
画像検査は、ADPKD/多発性嚢胞腎の診断、病気の進行や合併症の診断に必要な検査です。
腹部の超音波検査、CT、MRIでは、腎臓や肝臓の大きさ、嚢胞の数と大きさなどを調べます。
頭部MRアンジオグラフィ(MRA)は、脳動脈瘤のスクリーニングに有用です。脳動脈瘤は破裂すると生命に関わることから、ADPKD/多発性嚢胞腎患者さんは定期的に頭部MRA検査を受けることが推奨されています。
- 超音波検査
- 超音波を腹部に当て、返ってくる反射波を画像化して診断する。
黒い袋のように見えるのが嚢胞。
- 造影CT検査
- CTはコンピュータ断層撮影(Computed Tomography)の略。X線を照射し、通過したX線量との差を画像化して診断する。より鮮明な画像を得るために造影剤が使用される。
黒い袋のように見えるのが嚢胞。
- MRI検査
- MRIは磁気共鳴画像法(Magnetic Resonance Imaging)の略。
強力な磁石でできた筒の中に入り、磁気の力を利用して体の臓器や血管を撮影する。
両側腎臓に多数の大小の嚢胞が認められる。
写真:エビデンスに基づく多発性嚢胞腎(PKD)診療ガイドライン2020より引用