多発性嚢胞腎
両側の腎臓に「嚢胞」という液体の入った「袋」ができる遺伝性の疾患です。
年齢を重ねるとともに「嚢胞」が大きくなり数も増え、次第に腎臓の機能が低下します。これによって日常生活にさまざまな支障が生じます。 多発性嚢胞腎には、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)と、常染色体劣性(れっせい)多発性嚢胞腎(ARPKD)の二つのタイプがあります。
- 常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)
- ADPKDは、両親から受け継いだ常染色体にある一対の遺伝子(PKD1)、あるいは(PKD2)のどちらかに異常があれば発症する可能性があります。その可能性は、男女を問わず50%の確率です。
- 常染色体劣性多発性嚢胞腎(ARPKD)
- ARPKDは、両親から受け継いだ常染色体にある一対の遺伝子(PKHD1)の両方に異常があると発症します。多くは出生直後〜幼児期から発症します。
遺伝子のどちらか一方だけに異常がある場合は、症状があらわれない「キャリア」となります。
超音波検査
超音波を利用した画像検査法です。
超音波とは、人間の耳には聞こえない高い周波数の「音波」で、一定方向に強く放射されて直進性が高い性質を持っています。この性質を利用して腹部に超音波を発信し、そこから返ってくる反射波(エコー)を受信し、コンピューター処理で画像化した映像を用いて診断するのが超音波検査です。 超音波検査は、エックス線検査のように放射線被ばくの心配もなく、産婦人科で妊婦の検診に用いられる程、安全で苦痛のない検査法です。
超音波検査は、簡便であり、ADPKD/多発性嚢胞腎のスクリーニングに用いられます。ただし、その精度はCTやMRIに比較して劣ります。
透析療法
腎臓病が悪化し末期腎不全になった場合に行うのが透析療法です。透析とは、体の血液を浄化する機能を腎臓に代わって行う方法で、「血液透析(HD)」と「腹膜(ふくまく)透析(PD)」の二つがあります。
「血液透析」は機械に血液を循環させて濾過する方法で、「腹膜透析」は、自分の腹膜を濾過装置として利用する方法です。透析によって、人工的に血液中の老廃物を排泄し、血液中のカルシウム、カリウムといった電解質の調整を行い、余分な水分や塩分の除去を行います。
「腹膜透析」の場合、自宅などで1回30分ほどかけて透析液を交換し、それを1日4回行います。病院に行かなくてもできるのがメリットですが、清潔な場所での交換が必要なので、その場所を確保する必要があります。
「血液透析」の場合は、透析設備のある医療機関に週3回ほど通院し、専門のスタッフのもとで1回あたり4〜5時間かけて行います。
最近では、自宅に透析器を置き、自分や家族の協力のもとで「家庭透析」を行う場合もあります。
透析を行っていても、健康な人とほとんど同じように生活ができます。旅行のときには、旅行先の透析施設とあらかじめ連絡をとっておけば、長期旅行も可能です。ただし、QOL(Quality of Life『生活の質』)を長く維持していくためには、適正な血圧管理を含めた薬物療法、またある程度の水分、塩分、たんぱく質などの食事管理が必要になります。
ドレナージ術
体内に貯留した膿や血液などを体の外に排出することをドレナージといいます。嚢胞の大きさが5cmより大きい場合に行われることがあります。嚢胞感染の際、通常は抗菌薬を投与しますが、抗菌薬が効かない場合や再発を繰り返す場合は嚢胞にドレナージ術を行うこともあります。
嚢胞にドレナージ術を行う際には、超音波ガイド下で穿刺を行い嚢胞にカテーテルを挿入します。ドレナージ液から感染原因となっていた細菌が検出されなくなれば、ドレーンを抜くことができます。嚢胞の直径が5cm以上の感染嚢胞は治りにくい傾向があるので、早めにドレナージ術をすることが望ましいといえます。