指定難病

指定難病は、「難病の患者に対する医療等に関する法律」(難病法)において医療費助成の対象となる疾患のことを指します。この法律における難病は、1)発病の機構が明らかでなく、2)治療方法が確立していない、3)希少な疾患であって、4)長期の療養を必要とするもの、と定義されていますが、指定難病はさらに5)患者数が本邦において一定の人数(人口の約0.1%程度)に達しないこと、6)客観的な診断基準(又はそれに準ずるもの)が確立していること、と定められています。

ADPKD(常染色体優性多発性嚢胞腎)はこの法律が施行された当初(平成27年、2015年)から指定難病に指定されています。
ADPKD/多発性嚢胞腎患者さんが受けられる医療費助成についての詳細は、「2つの公的支援制度」をご覧ください。

「難病対策の概要」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/000907948.pdf)を加工して作成

常染色体優性遺伝

常染色体優性遺伝(じょうせんしょくたいゆうせいいでん)とは、遺伝形式をあらわしています。

常染色体とは?
ヒトの染色体には、22個の常染色体と1個の性染色体(X染色体あるいはY染色体)があります。両親から1個ずつそれぞれ染色体を受け継ぐため、44本(22×2)の常染色体と2本の性染色体を、ヒトは持っています。
優性遺伝とは?
遺伝子は両親から同じ遺伝子を1つずつ受け継ぎますが、そのうちの1つの遺伝子に変異があるだけで発症する場合を「優性遺伝」といいます。これに対して両親から受け継いだ遺伝子の両方に変異があると発症する場合を「劣性(れっせい)遺伝」といいます。

病気の遺伝子が常染色体に存在し、かつ優性遺伝する場合を常染色体優性遺伝といいます。ADPKD/多発性嚢胞腎は、両親のどちらかが病気を持っている場合、子に病気が遺伝する可能性があります。また、その場合、子供が病気の遺伝子を受け継ぐ確率は男女差なく50%になります。

常染色体優性遺伝

腎性全身性線維症

腎性全身性線維症は、重篤な腎障害のある患者さんにみられる疾患で、ガドリニウム造影剤の投与数日後から数ヵ月後、場合によっては数年後に、皮膚が腫れたり、硬くなったり、痛みがみられることがあります。進行すると、両手両足の関節が硬くなり、動けなくなって、死に至る可能性もあります。今のところ、どうしてこのような病気が発症するのかは明らかになっていませんが、重度の腎障害患者さんのMRI検査におけるガドリニウム造影剤使用との関連が示唆されています。

腎臓

腎臓

腎臓は体の背中側、腰の少し上あたりに左右一つずつある臓器です。ソラマメのような形をした、握りこぶしほどの大きさです。
おもな機能は、

  1. 血液を濾過し、老廃物を尿として体の外に排出。
  2. 体液量の調節。
  3. 体の中のナトリウム、カリウム、リン、マグネシウムといった電解質の調節。
  4. 血圧をコントロールしたり、血液を増やすホルモンの分泌。
  5. 骨の強さを保つために必要なビタミンDの活性化。

腎臓の中には、血液から尿をつくりだす仕組みとして、「ネフロン」と呼ばれる基本単位があります。ネフロンは、「糸球体(しきゅうたい)」と「尿細管(にょうさいかん)」で構成されています。まず、「糸球体」で血液を濾過して、尿のもとになる原尿がつくられます。原尿には、体に必要な成分や水分がまだ含まれています。この原尿から「尿細管」で、体に必要な成分や水分が体の状態に合わせて再吸収され、残りが尿として排出されます。

一つの腎臓には、およそ100万個のネフロンがあるといわれています。正常なネフロンが減っていくと腎臓の機能が低下していきます。

もともと腎臓には予備能力があるので、一部のネフロンが壊れても、別の部分で補われるので、すぐに症状が悪化していくことはありません。それだけに、発見の遅れや軽症時の油断が懸念されます。また、ネフロンは、壊れると再生しにくいので腎機能低下を指摘されたら、残っている健康なネフロンを保持するため、医師の指示にしたがって食事療法や薬物療法を行う必要があります。

腎動脈塞栓療法

腎動脈塞栓療法(じんどうみゃくそくせんりょうほう)とは、大きくなった嚢胞腎を縮小させる目的で、腎動脈の血流を遮断する手術です。嚢胞腎が大きくなり腹部膨満になった結果、歩行や服装など日常生活に支障を来したり、胃腸が圧迫されて便秘、食欲不振により低栄養になる(上肢が痩せる)場合もあります。それらの症状を軽減するために行います。

腎動脈塞栓療法は基本的に、すでに透析を受けていて、尿量が1日500mL未満の方が対象となります。腎動脈塞栓療法の方法は、太腿の動脈から細い管(カテーテル)を挿入して塞栓する部位まで進め、小さな塞栓物質で腎動脈に栓をするように詰めるという方法です。この塞栓によって、腎臓は縮小します。塞栓物質としては、金属コイルが使われることが多いですが、最近は、ビーズなどの塞栓物質も開発されています。

腎動脈塞栓療法

腎嚢胞穿刺吸引療法

腎嚢胞穿刺吸引療法(じんのうほうせんしきゅういんりょうほう)は、ADPKD/多発性嚢胞腎の進行を遅らせる治療法ではありませんが、嚢胞が大きくなることで発生する長く続く痛みや、腹部圧迫などの症状を改善する治療方法です。

嚢胞の大きさが3cm以上の場合に行われることがあり、超音波ガイド下で嚢胞に細い針を刺し、嚢胞内の液体を吸引します。1個〜数個の大きな嚢胞にこの治療法を行うと半年〜数年の効果が期待できます。

嚢胞内の液体を吸引した後に、再度液体が溜まらないようにエタノールや抗菌薬などの硬化剤を注入することもあります。

腎不全

腎不全

腎臓の機能が低下した状態を腎不全といいます。体液のコントロールや老廃物の排泄ができなくなるため、全身にさまざまな症状があらわれます。

腎不全には、二つのタイプがあります。多量の出血や薬剤投与などが原因となって、急に腎臓の機能が低下する「急性腎不全(急性腎障害)」と、数年から数十年かけて徐々に腎臓の機能が低下していく「慢性腎不全」です。

ADPKD/多発性嚢胞腎は「慢性腎不全」の原因となる疾患の一つです。

「慢性腎不全」は、腎臓の機能が正常時の30%以下程度に落ちてしまった状態をいいます。一般的に腎不全では、倦怠感や息切れ、食欲不振、むくみなどといった症状が見られます。検査では血圧上昇のほか、低カルシウム、高カリウム、血液が酸性に傾くアシドーシスといった症状が顕著になります。慢性腎不全は何年もかかって腎臓の機能が低下していきますので、腎臓の障害度によって症状や治療も違ってきます。

病状がさらに進行して腎臓の機能が極度に低下した状態を「末期腎不全」といい、人工透析が必要となるほか、腎臓移植も選択肢の一つとなります。

近年、「慢性腎不全」は「慢性腎臓病」として大きく捉えられることが多くなっています。

セカンドオピニオン

セカンドオピニオン

現在診療を受けている主治医以外の違う医療機関の医師に、現在の診断や治療選択など診療上の疑問について意見を求めることを「セカンドオピニオン」といいます。セカンドオピニオンは、今後も現在の主治医のもとで治療することを前提に利用するものであり、主治医に対する不満や苦情、医療訴訟に関する意見を求めるものではありません。

セカンドオピニオンを聞くにあたっては、まずは主治医の診療方針をよく理解するようにしましょう。それからセカンドオピニオンを聞きに行く医療機関もしくは医師を選びます。セカンドオピニオンを受け入れている施設の情報はインターネットで検索できるほか、主治医に紹介してもらうことも可能です。

ADPKD/多発性嚢胞腎では、脳動脈瘤など特に命にかかわる重大な合併症の治療の際にセカンドオピニオンが行われることがあります。

造影剤腎症

造影剤腎症は、CTや血管造影に使われるヨード造影剤投与後に、腎機能が低下する病気です。腎機能低下に応じて増加するほか、冠動脈の造影検査やカテーテル治療と、造影CT検査では発症する頻度が異なるなど、検査の種類によってもリスクが異なります。また、糖尿病を合併している患者さんや高齢の方も腎障害のリスクが高くなります。

造影剤腎症は十分な点滴により予防することが可能です。