13 徳島で進めるADPKD診療の実際

橋本 寛文 先生 JA徳島厚生連 吉野川医療センター 院長

徳島県のADPKD診療を支えてきた泌尿器科医

泌尿器科医が徳島の腎・透析治療を支えてきました

徳島県に限った話ではないのですが、かつては腎臓内科がない地域がたくさんありました。四国でも長い間、泌尿器科が腎臓病を診療していて、現在でも透析の7割は泌尿器科で行っていると思います。透析を始める前の慢性腎臓病の患者さんも、今でも泌尿器科で診療していますし、つい最近まで糖尿病性の腎臓病や腎硬化症、腎炎など腎臓病は一通り診療していましたね。

泌尿器科は大きく分けると外科なのですが、このような背景もあり、私自身、内科的な腎臓の病気にも興味がありました。本来ならば腎臓内科で診療するような腎臓病の診断・治療も普通にやっていましたし、そもそも四国へ透析を導入したのは泌尿器科の先輩方ですから、その先輩から教わった私も当然腎臓病や透析をやっていくものだと思っていました。

今はもう腎臓内科があるので、これから受診される腎臓病の患者さんは腎臓内科に行けばいいと思いますが、四国の泌尿器科医の多くは腎臓病診療の経験があるのではないでしょうか。

ADPKDを通じて家族を診てきました

透析導入の原因としてADPKDは4位と、糖尿病や慢性糸球体腎炎などと比べて多いわけではないですが、私が当院で25年間に携わったADPKDを原因とする透析患者さんは7家系に及びます。ADPKDは遺伝性の病気なので、おばあちゃん、お父さんと透析をしていて、今ご自身がADPKDの治療を受けているという患者さんもいらっしゃいます。

ADPKDで透析を受けている患者さんのお子さんやお孫さんはADPKDを発症する可能性がありますので、患者さんには折に触れ、ご家族も定期的に検査を受けるようにお話ししているのですが、なかなか受け入れてもらえません。自分がADPKDになっているかどうかも調べたくない、もう聞きたくないとおっしゃった方もいました。

昔は積極的に検査しても腎機能が低下していくのを止めることはできなかったのですが、今は腎機能低下を遅らせる治療がありますので積極的に検査を勧めています。今も既に透析している患者さんのお子さん2名の経過をみています。

検査法の進歩で早期発見・早期治療ができるように

今は企業健診や人間ドック等で、腎臓に嚢胞が見つかりましたと言われて受診される方も多いのですが、実際に来られてから聞いてみると両親や祖父母が腎臓病で亡くなっていて、これは遺伝性の病気だろうとわかって来る方もいらっしゃいますね。昔はエコーやCTといった検査はなかったので血尿が出るまで気づかないことも多かったのですが、今はそういう症状が出てから来られる方は少ないと思います。

家族歴を知らなくて初めて受診される患者さんはやはりショックは大きいと思いますが、最近は情報社会ですし、積極的に啓発もしていますので、なんとなく察して受診される方は多いようです。

ADPKDと診断されてもすぐに治療が必要な患者さんばかりではありませんので、定期的に、状態にもよりますが例えば1年に1回は検査受診するように勧めます。腎機能低下が現れるのは40歳くらいからが多いので、それまでは年1回検査しましょうと話すようにしています。検査法の進歩もADPKDの早期発見・早期治療につながっていると思います。

気持ちを楽にして治療を受けてください

昔は治療法がありませんでしたが、今は透析を遅らせる治療法がありますのでADPKDになったからといって悲観的になる必要はないと思います。治療がうまくいけば一生透析しなくてもすむかもしれません。これはADPKDに限ったことではないのですが、精神的な負担を軽くしてあげることも医師の仕事なので、患者さんが安心できるように病気のことと治療法についてきちんと説明しています。ですから気持ちを楽にして前向きに治療に取り組んでいただければと思います。

村上 太一 先生 徳島大学病院 腎臓内科 助教(取材当時)

ADPKD患者さんの悩みを減らすために

徳島県初の腎臓内科にやりがいを感じて

橋本先生のお話にもありましたように、徳島県では泌尿器科の先生方が中心となって腎臓病診療が行われてきました。私が徳島大学医学部に入学した頃は、まだ保存期の腎臓病の患者さんを診療する腎臓内科はありませんでしたが、私が医学部6年生になった時、土井俊夫先生が教授として来られて徳島大学に腎臓内科ができたのです。

それまでは徳島大学に腎臓内科がなかったため、正直、私にとってはあまりなじみのない診療科だったのですが、土井先生の腎臓病に対する熱意や考え方をお伺いし、また徳島県初の腎臓内科という点にもやりがいを感じて腎臓内科医を志すことにしました。

一般の人にも腎臓病をよく知ってほしいと考えて

土井先生が着任されてから、県とタイアップして、県民に腎臓病について少しでも広く知っていただくために講演会を開催したり、県医師会主導の講演会に協力したりするようになりました。

その甲斐あってか、外来で診察していても、自分が腎臓病であること、将来的には透析が必要になる可能性があるということをわかっている患者さんが多くなったように思います。また、透析にならないように腎臓病治療に対して積極的に取り組もうとする患者さんも多くなり、20年前と比較すると腎臓病がよく理解されてきていると感じています。

徳島の大学病院として多くのADPKD患者さんを受け入れています

ADPKDの治療薬が使えるようになりADPKDと診断もしくは疑いのため徳島大学腎臓内科を受診された患者さんは明らかに増えて、現在では100名を超えています。当科ではそれらの患者さんを各曜日の外来担当医が診療していますが、私の外来にもADPKDの患者さんは10名以上いらっしゃいます。

当科は大学病院ということもあり、地域の病院から紹介されてくる患者さんが多くいます。これは、県医師会とタイアップして、慢性腎臓病のスクリーニング、専門医への紹介システムを構築していることも関係しています。具体的には健康診断における尿検査で尿蛋白陽性であったり、腎機能低下があれば地域の病院や開業医を受診していただき、詳しく調べてもらうようにします。その結果、腎臓病専門医の診察が必要ということであれば、当院を含め腎臓病専門医のいる病院に紹介できるような仕組みができあがっています。当科を受診しているADPKD患者さんのほとんどは、このシステムを通じて発見された方です。

遺伝性の病気だからこそ割り切ってADPKDに向かい合う

ADPKDは遺伝性の病気という点で、精神的に悩まされる患者さんもいらっしゃるかと思います。しかし遺伝性の病気だからこそ患者さんにはしっかりと病気に向き合っていただき、少しでも嚢胞の増大を遅らせて、末期腎不全への進行を遅らせるように治療に臨んでいただきたいと考えています。我々主治医も微力ながらサポートさせていただきます。

前向きに治療できるような説明を心がけています

当科の外来に来られるADPKD患者さんのほとんどが健診や人間ドックで病気を疑われ、クリニックの先生から紹介されていらっしゃいます。そのため、ADPKDが遺伝性の病気だと知らなくて受診される患者さんも多くいます。また、受診される患者さんの多くは具体的な症状が出ているわけではないので、非常に悲観的な患者さんというのはほとんどいません。むしろ家族歴がわかっていて受診される患者さんの方が診断に対するショックは大きいと思います。

患者さんに対してADPKDの説明をする時には病気の進行や合併症は個人差があること、治療法やその注意点についてわかりやすくお話しするようにしています。患者さん自身が自分に適した治療を選択し、治療目標を自ら設定できるように情報提供をするよう心がけています。

よりよい人生を送れるようにお手伝いします

ADPKDによる腎不全への進行や透析導入を遅らせることによって人生が変わってくることもあるかと思います。われわれはADPKDに対して万能ではありませんが、患者さんの人生がより良くなるようなお手伝いを、治療を通じてできればと考えています。

JA徳島厚生連 吉野川医療センター 院長 橋本 寛文 先生

経歴

  • 1980年徳島大学医学部卒業、
    徳島大学医学部泌尿器科学教室入局
  • 1983年高松赤十字病院泌尿器科
  • 1986年高知高須病院 副院長
  • 1994年麻植協同病院 泌尿器科部長・腎センター長兼務
  • 2003年麻植協同病院 診療部長
  • 2007年麻植協同病院 副院長
  • 2009年麻植協同病院 院長
  • 2015年吉野川医療センター 院長・JA徳島厚生連 理事
  • 2018年吉野川医療センター 院長・阿波病院 統括院長兼務
徳島大学病院 腎臓内科 助教(取材当時) 村上 太一 先生

経歴

  • 2000年徳島大学医学部卒業
  • 2000年徳島大学病院腎臓内科 研修医
  • 2001年静岡市立静岡病院腎臓内科 研修医/専攻医
  • 2005年徳島大学病院 医員
  • 2009年徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 腎臓内科学分野 助教
  • 2010年徳島大学大学院博士課程卒業、医学博士号取得
  • 2011年Visiting Fellow, Kidney disease Section, NIDDK, National Institutes of Health(米国国立衛生研究所)
  • 2014年徳島大学大学院医歯薬学研究部 医科学部門 腎臓内科学分野 助教
  • 2019年愛媛県立中央病院腎臓内科 部長

2019年6月作成
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