「尿」で知る腎臓の病気

[監修]東京女子医科大学 血液浄化療法科 特任教授 土谷 健 (つちや けん)先生プロフィール

尿のつくられ方尿のつくられ方

血液と腎臓の働き

血液は酸素や栄養素を全身に運ぶとともに、老廃物や毒素も受け取って循環しています。

全身をめぐって汚れた血液は、やがて腎臓を通ります。腎臓では、血液から老廃物や毒素をろ過して取り除き、きれいに浄化します。また、余分な水分なども一緒に取り除きます。

腎臓で取り除かれた老廃物や毒素、余分な水分などは、尿として体外に排泄されます。
腎臓が一日にろ過する血液の量は150Lといわれており、大型のドラム缶1本分に相当します。

尿を作ることは、腎臓の主要な仕事の一つです。
この機能が低下すると、体中に老廃物や毒素が蓄積してしまうことになります。

血液をろ過して尿がつくられる

腎臓で尿を作っているのは、「ネフロン」という構造です。ネフロンは腎臓の最小単位の構造物であり、腎臓1個に約100万個あります。

ネフロンは毛細血管が詰まった「糸球体」と呼ばれる組織から始まります。糸球体はボーマン嚢(のう)という袋に包まれています。

糸球体に血液が送られると、糸球体ろ過により毛細血管からボーマン嚢に水分がにじみ出します。これが尿の元(原尿)となります。

次に原尿は「尿細管」という細い管に流れていきます。尿細管は、原尿から塩分やたんぱく質など、体にとって必要な物質を選び出し、その約99%を再吸収します。

最終的に残りの1%が、不要な老廃物を含んだ水分である尿として、体外へ排出されます。

尿の成分

尿の成分の90%以上は水分です。そのほかに、尿素、アンモニアなどのタンパク質の代謝によって作り出される老廃物が含まれます(表)。

1日の尿量は健康な人では約1L〜1.5Lです。腎機能に障害があると、500mL程度になったり(乏尿)、2L以上になったり(多尿)します。

このように腎臓は、老廃物や余分な水分を排出することで身体を健康に保っています。そのため、尿の色や量などによって、全身の状態を知ることができます。

腎臓病の1つにADPKD(常染色体優性多発性嚢胞腎)という遺伝性の病気があります。腎機能を低下させる遺伝性の腎臓病について、気になる方、知りたい方はここをクリック。