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基幹病院と医療連携して、”2人の主治医”でADPKD患者さんを支える 第2回 岡村医院 岡村基弘先生 八田内科 八田告先生 基幹病院と医療連携して、”2人の主治医”でADPKD患者さんを支える 第2回 岡村医院 岡村基弘先生 八田内科 八田告先生

京都では、多発性のう胞腎(ADPKD)について豊富な知識を持っている診療所が、ADPKD診療を行っている基幹病院と医療連携を進め、ADPKD患者さんを継続的に診療しています。基幹病院の医師とかかりつけ医の“2人の主治医”で患者さんを支えるという体制です。
ADPKD患者さんにとってメリットの大きい医療連携について、医療法人 八田内科医院院長の八田告先生と岡村医院副院長の岡村基弘先生にお話を伺いました。

基幹病院と医療連携して、
“2人の主治医”でADPKD患者さんを支える

2人のADPKD患者さんを治療されているそうですが、その医療連携について経緯や状況をお聞かせください。

八田先生

私が2週間に1度外来を担当している診療所では企業などの検診も行っています。2人の患者さんとはそこで出会いました。
まず、40代男性のAさんは、毎年欠かさず勤務先による健康診断を受けていましたが、簡易的なものであったために、血液検査の項目にクレアチニン値が含まれておらず、腹部エコー検査もなかったため、ADPKDに気付かないまま過ごしていた状況でした。転職を機に健康診断の内容が変わり、私の外来を訪れたことがきっかけでADPKDと診断されました。家族歴がなく、ADPKDに関する知識も心構えもなかったため、非常にショックを受けていらっしゃいました。しかし、今は治療薬が登場していること、基幹病院で専門的な検査が受けられることなどを説明し、医療連携を開始しました。
また、60代女性のBさんは、ADPKDと診断されてから当院で経過観察を行ってきました。治療薬が誕生したことを機会に、難病医療費助成制度や副作用等について説明し、専門外来を持つ基幹病院へ紹介したという流れです。
現在は2人とも、1年に1度は基幹病院で脳動脈瘤に関するMRI検査などを受けつつ、月に1度は当院で血液検査を行い、肝機能や腎機能のチェックを行っています。

ADPKD診療に関する医療連携の必要性、患者さんのメリットなどについてどのようにお考えですか。

八田先生

ADPKDに限らず、日頃の健康管理は地域のかかりつけ医に、専門的な治療や検査はスペシャリストがそろう基幹病院にという受診の仕方が、患者さんの間でも定着しつつあると感じます。その中でも、ADPKDなど長く付き合うことになる慢性的な疾患については、基幹病院とかかりつけ医が医療連携して診る体制こそが、患者さんにとって通院などの負担軽減につながると思います。
基幹病院では、普段の風邪や花粉症などは診てもらいにくいかもしれません。一方で、ADPKDを含めてオールラウンドに診ることのできるかかりつけ医を持つことで「常に安心して生活ができる」といった声が患者さんから聞かれます。

基幹病院と医療連携を進めるにあたり、注意している点や心掛けていることがあればお聞かせください。

八田先生

医療連携を開始する最初の段階で、専門医とかかりつけ医が役割分担を決めておくことが重要だと考えています。ADPKD患者さんを共に診ていくにあたり、採血や画像診断、各種症状に対する対処から指定医療費の申請書の作成まで、文書でも電話でもよいのでそれぞれの立ち位置を共通認識として最初に確認しておくことが大切です。そうすることで、患者さんへの対処がスムーズになり、患者さんがストレスなく治療を続けられ、医師も安心して治療を継続することができると思います。

医療連携を進める上では、どのような課題があるとお考えですか。

八田先生

ADPKD患者さんは、診断がついている・ついていないにかかわらず、その多くがかかりつけ医を受診しています。しかし、ADPKDという疾患自体を知ってはいても、治療薬や対処法までは知らないかかりつけ医が少なくありません。専門医の育成はもちろん不可欠ですが、患者さんを専門医へ紹介するにあたり、ADPKD治療に関して分かりやすく説明して理解してもらうためには、かかりつけ医が知識をさらに増やすことも大切です。研究会などを通じて知識を深め、基幹病院の医師と顔を合わせる機会が増えれば、かかりつけ医のADPKDに対する意識もより高まります。

最後に、ADPKDの患者さんやそのご家族へのメッセージをお願いします。

貴院におけるADPKD医療連携のきっかけについてお聞かせください。

岡村先生

私が当院に赴任してすぐの頃、そこで働く40代の職員に腎機能低下が見られ、他院で10年ほど高血圧治療を受けているという話を聞きました。私はADPKD専門外来を持つ基幹病院に勤務していた経験があったため、もしやと思い、エコーをはじめ各種検査を行ったところ、ADPKDであることが確認されたのです。ご両親の腎臓にものう胞があったようですが、ADPKDと診断されたことはなく、また透析に至った親族もいなかったため、ご本人は寝耳に水の状況だったようです。
私のかつての勤務先である基幹病院へ紹介し、すぐに医療連携がスタートしました。現在は年に1回、その病院で精密検査を受けながら、当院では毎月の採血を行い、治療や日常生活に関する不安はないかなど、きめ細かな問診を行っています。当院の職員であるため、毎月どころか毎日でも話ができるという特殊な状況ですが、子どもを持つことなどプライベートな悩みにも対応でき、あらゆる面で安心感を持って治療が続けられているようです。

患者さんにとっては“2人の主治医”がいる状況ですが、その点で特に意識していることはありますか。

岡村先生

専門知識を持つ基幹病院に準じることが基本と考えていますが、患者さんが基幹病院を受診した後は、担当の先生が検査結果や状況に関する丁寧な手紙をくださるため、医療連携もスムーズにできていると感じます。“2人の主治医”の情報共有がしっかりしできているため、患者さんも安心だと話しています。私は泌尿器科医であり、ADPKDの知識もある程度は持っていますが、遺伝に関する問題など少しでも疑問を感じたら、すぐに基幹病院の腎臓内科の先生に電話を掛けたり、手紙を書いたりするなどして解消しています。そうすることで、かかりつけ医である当院でも患者さんに不安を感じさせない対応ができ、私自身の知識の向上にもつながっています。

ADPKD医療連携が行われることは、患者さんにとってどのようなメリットがあるのでしょうか。

岡村先生

かかりつけ医には少しの不調でも診てもらえ、基幹病院では専門的な治療を受けることができます。この両面での安心感は医療連携なくしては得られません。“2人の主治医”の意見を聞けるのは、セカンドオピニオンを求めることと同じと言えます。ADPKDのように、慢性的で根治が難しい疾患であればあるほど、医療連携の必要性は高くなるでしょう。

医療連携が進むことで、ADPKD診療に関する変化はありましたか。

岡村先生

当院には透析センターもあり、そこにはADPKD患者さんもいらっしゃいます。60代の患者さんなら、お子さんは30代ぐらいでしょう。早めに検査を受けてADPKDの発見につなげてほしい年代なので、地道に声を掛けて検査を促すようにしています。“当院が医療連携している基幹病院にはADPKD専門外来がありますよ”という積極的なアプローチを行うことで、お子さん世代の早期受診にひと役買うのではないかと期待しています。

医療連携を進める上でどのような課題があるとお考えですか。

岡村先生

お子さん世代は、地元から離れて東京や大阪などに移り住んでいるケースも少なくありません。当院で透析を受けている患者さんからは、他の地域でADPKDを診てもらえる病院を紹介してほしいというニーズもあります。今後は、年に1度は地元の基幹病院で脳動脈瘤などの検査を受け、首都圏などの居住地でかかりつけ医を持つなど、地域をまたいだ医療連携が必要になるかもしれません。そのためにも、患者さんからさまざまな相談を受ける立場にあるかかりつけ医の意識を高め、知識や情報を得ていく取り組みが必要になると感じています。

最後に、ADPKD患者さんやそのご家族へのメッセージをお願いします。

2017年6月作成
SS1705221

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