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病院と診療所が協力し、地域でADPKD患者さんを診られる形をめざしています。 第1回 独立行政法人 地域医療機能推進機構(JCHO)仙台病院 佐藤 壽伸 先生 岩渕 將 先生 病院と診療所が協力し、地域でADPKD患者さんを診られる形をめざしています。 第1回 独立行政法人 地域医療機能推進機構(JCHO)仙台病院 佐藤 壽伸 先生 岩渕 將 先生

病院や診療所など地域の医療機関が相互に連携して患者さんの診療を進めていく地域医療連携――多発性のう胞腎(ADPKD)の診療を行っている独立行政法人 地域医療機能推進機構(JCHO) 仙台病院 腎センター内科では、地域の診療所(かかりつけ医)との連携を進め、診療所から紹介された患者さんを数多く受け入れています。そして今後は、同院の医師とかかりつけ医の2人でADPKD患者さんを支えていくという、患者さんにとっては2人の主治医で診療を進める形(2人主治医制)になっていくと考えられます。
ADPKD患者さんにとってメリットの大きい地域医療連携について、腎センター内科 統括診療部長の佐藤壽伸先生と腎センター内科 腎センター医長の岩渕將先生にお話を伺いました。

地域の診療所との医療連携で
ADPKD患者さんの紹介を受ける

JCHO仙台病院におけるADPKD患者さんの現状について教えてください。

当院では、地域の診療所からADPKD患者さんの紹介を受け入れています。その範囲は宮城県全域の他、福島県の北部や岩手県の南部など幅広く、腎臓疾患はもちろん、高血圧症など生活習慣病の治療に専門的に取り組む各地域の診療所と医療連携を図り、患者さんを紹介していただいています。
地域に根差した医療を提供している診療所の先生方の中には、患者さん個人だけでなく、ご兄弟やご両親、祖父母の代まで家系丸ごと診続けているケースも少なくありません。ですから、遺伝性の疾患であるADPKDの可能性のある患者さんを早期の段階で紹介いただくことも可能になっています。

ADPKDの診療はどのような流れで進んでいくのでしょうか。

2014年の4月以降、当院においてADPKDの治療対象になる患者さんの数は80名に上っています。診療の流れについては、まず紹介等でADPKDの疑いがある患者さんが来院されたら、血圧や腎機能、脳動脈瘤などについて検査する他、慢性腎臓病(CKD)の重症度分類に照らし合わせます。そして治療する上で最も重要な腎容積を測定します。治療の対象となった場合には、医療ソーシャルワーカーの協力を得て患者さんと共に難病医療費助成の申請手続きを行っていきます。治療の対象とならなかった場合でも、腎容積と腎容積増大速度をしっかりと測定した後、地域のかかりつけ医と情報を共有しながら、半年に1度などの定期的な検査で経過観察を行っていきます。

JCHO仙台病院ではかかりつけ医との医療連携がとてもスムーズに進んでいるように思えます。

当院では古くから、腎機能障害を持つ患者さんに対する地域医療連携のモデルが構築されており、CKDから学校検尿の異常まで幅広く対応してきました。そのため、ADPKDに対する医療連携もスムーズに軌道に乗った形です。ADPKDに対する知見が高いかかりつけ医も多く、遺伝性の疾患であることを加味し、腎不全などの家族歴がある患者さんにのう胞が見つかれば当院へ紹介していただく流れができています。

ADPKDに関して、JCHO仙台病院の地域連携室はどのような役割を果たしているのでしょうか。

当院の外来は混んでいることが多いのですが、かかりつけ医から紹介を受けた患者さんの中には、ご高齢のために外来のソファに長時間座っていることがつらい方や、認知症などの影響で待つことが困難な方もいらっしゃいます。また、働いている患者さんが平日に来院するには、仕事のスケジュール調整が必要な場合もあるでしょう。そこで地域連携室が窓口となり、朝の早い時間や外来終了間際の時間など、それぞれの患者さんの状況に合わせた受診ができるように調整を図っています。

かかりつけ医との連携強化で
患者さんにも大きなメリットが生まれる

ADPKDに関する啓発ポスターを作成されたと伺いました。

私たちが最も避けなければならないと思うのは、疾患や治療に関する情報を知らないばかりに患者さんの選択肢が狭まることです。そこで、ADPKDの疾患啓発ポスターを作成し、医療連携する診療所などおよそ700の関連施設に配布しました(図)。外来などに掲示していただいたことで、ADPKD患者さんの紹介例も増加しています。

図 ADPKDの疾患啓発ポスター

情報提供の場をつくることが重要なのですね。

例えば、透析療法を開始している患者さんを通じて、ご家族に情報提供を行うことは不可能ではありません。ただし、一人一人の患者さんとお話しするのは時間的に難しく、またプライバシーの問題などから透析室での情報提供はなかなか進みにくいのが現状です。ADPKDという疾患とその治療法について知っていただける場をつくることは、意外に難しいのです。そういった意味でも、ポスターの効果は高かったと感じています。

ADPKDの患者さんが増えてくると、かかりつけ医との連携強化も必要になるのでしょうか。

患者さんの状態がある程度落ち着いたと判断できた段階でかかりつけ医にお任せし、地域内で患者さんを診られるような形で診療を進めていくことが重要になります。その場合は、合併症の状態や腎機能、腎容積、のう胞の状態や感染症の危険性など、かかりつけ医に対して詳細な情報提供を行っていく必要があるでしょう。病院の定期的な受診スケジュールなどもきちんと決め、何か異変があればかかりつけ医を通していつでもご相談していただけるように、私たち受け入れ側の体制も整えていきたいと思います。

JCHO仙台病院と診療所との連携が進むことによる患者さんのメリットはどのようなことでしょうか。

かかりつけ医と患者さんとのつながりは非常に密で、私たちには話していただけないような治療への不安やご家族への心配なども話しやすい環境にあると思います。また、例えばADPKD患者さんが風邪を引いたなどちょっとした体調不良の場面でも、かかりつけ医であればスムーズな受診が可能なはずです。病診連携(病院と診療所との医療連携)が進めば、患者さんにとって主治医が2人いるという状況にもなり、より安心して疾患と向き合っていけるのではないでしょうか。

JCHO仙台病院がかかりつけ医との関係を強化するために取り組んでいることはありますか。

大切なのは私たち病院の医師と診療所の医師がお互いを熟知するような“顔の見える連携”を築くことだと考えています。書面だけのやりとりではなく、患者さんの症状や治療に関する微妙な問題に対しては電話でお話ししたり、直接お会いする必要がある場面も出てきたりするでしょう。そのようなやりとりをスムーズにするためにも、研究会などお目にかかれる機会には積極的に足を運び、つながりを強化していきたいと考えています。
“顔の見える連携”ができていれば、かかりつけ医の先生方がADPKDに関するささいな疑問を感じた場合でも遠慮せずに問い合わせてくれるようになります。病診連携で医師同士の関係が確かなものになっていれば、患者さんにとっても大きな安心材料となります。

ADPKD診療に関して、今後の抱負をお聞かせください。

以前から腎臓疾患に対する医療連携が進んでいたという風土もあり、ADPKDに関しても比較的スムーズに進んでいると思っています。ただし、それは当院だけが感じていることかもしれません。ですから、連携がどのくらいスムーズに行われているかを客観的に評価できる方法があればよいと考えています。
また、最近の話になりますが、患者さんを紹介いただいている診療所の先生から、当院の受付時間をもう少し長くしてはどうかとかという意見をいただきました。これを受けて先日、各かかりつけ医に対して当院への要望をお聞きするアンケート調査を行ったところです。この内容を精査し、より良い診療体制を確立していきたいですね。

最後に、ADPKDの患者さんやそのご家族へのメッセージをお願いします。

とにかく、気軽にかかりつけ医を通して専門医を受診してほしいということです。遺伝性疾患という特徴を持つADPKDに対して悩むこともあるかもしれません。しかし、私たち医療従事者はできることは全て行いたいと思っています。新たな治療方法も誕生していますので、ぜひ前向きに、共にADPKDと向き合っていきましょう。

2017年2月作成
SS1702062

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