アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬

アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(じゅようたいきっこうやく)は、高血圧の治療薬です。

ADPKD(常染色体優性多発性嚢胞腎)では、高血圧を合併することが多く、また、腎機能が悪くなる前に高血圧を発症することもあります。まずは減塩が必要ですが、目標値まで血圧が下がらない場合は降圧薬を服用する必要があります。アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬は、ADPKD/多発性嚢胞腎に合併する高血圧治療の第一選択薬です。

血圧は、さまざまな要因が絡み合ってコントロールされています。その一つとしてレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系という、血圧や体液バランスを保つ調整機構があります。

「アンジオテンシンⅡ」は、その仕組みの中で、血管を収縮、体液量増加により血圧を上げる機能をします。アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬は、その機能をブロックすることで、血圧を下げる作用をもたらします。

アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬

遺伝カウンセリング

遺伝カウンセリングでは、遺伝性疾患について、医学的情報をわかりやすく患者さんおよび家族に伝えます。また、遺伝情報をどのように受け入れたらよいのかについての心理社会的支援を行います。

一般的な遺伝カウンセリングの内容は、大きくわけて次の3点です。

  1. 1.病気の自然経過や治療について。
  2. 2.発症や出生前における保因者診断や遺伝子診断について。
  3. 3.結婚や出産など、病気に関わる人生の悩みについて。

病気に対する正しい認識や知識、情報を伝えることを目的としています。

ADPKD/多発性嚢胞腎の遺伝カウンセリングについての詳細は「ADPKDと遺伝のお話 ―遺伝カウンセリング―」をご覧ください。

遺伝カウンセリング

遺伝子診断

遺伝子の異常が原因で起こる病気を遺伝性疾患といいます。病気の原因となる遺伝子を持っているかを調べて診断することを遺伝子診断といいます。

ADPKD/多発性嚢胞腎は、「PKD1」または「PKD2」 という遺伝子に変異があることが原因です。この遺伝子を持っているかを調べることは可能ですが、簡便なものではなく、一般的に診断を目的とした遺伝子検査は行われていません。

通常は、家族歴の確認および画像検査(超音波・CT・MRIなど)により、確定診断します。

遺伝子診断

遺伝子変異

人体の設計図である遺伝子に異常が起こることを遺伝子変異といいます。

変異した遺伝子からは、本来の性質を持たないタンパク質がつくられます。そのため、何らかの理由で遺伝子に変異が起こると病気の原因となる場合があります。また、親から変異した遺伝子を受け継ぐことで発症する疾患を遺伝性疾患といい、ADPKD/多発性嚢胞腎もその一つです。

ADPKD/多発性嚢胞腎の患者は、親(患者)から変異した「PKD1」または「PKD2」という遺伝子を受け継いでいます。もう一方の親(ADPKD/多発性嚢胞腎ではない方)から正常な「PKD1」または「PKD2」遺伝子を受け継いでいるので、すぐには発症しません。正常な方の遺伝子にも変異が起こると本来の性質を持ったタンパク質をつくることができなくなります。
PKD1」、「PKD2」からは、「ポリシスチン1(PC1)」、「ポリシスチン2(PC2)」というタンパク質が産生されます。これらのタンパク質は尿細管の大きさ(太さ)を調節しているので、本来の機能を果たせなくなると嚢胞が形成されていきます。

遺伝子変異

遺伝子PKD1 PKD2

ADPKD/多発性嚢胞腎は遺伝性の疾患です。親から子に病気を起こす遺伝子が受け継がれることで発症します。ADPKD/多発性嚢胞腎の原因遺伝子として、二つの遺伝子が知られています。一つは、「PKD1」で、もう一つは「PKD2」です。ADPKD/多発性嚢胞腎の患者の80%が「PKD1」、15%が「PKD2」、残りの5%が両方又はその他の遺伝子に変異を持っています。

PKD1に変異がある家系」は、「PKD2に変異がある家系」よりも、一般に病状が重いです。しかし、同じ家系内においても病気の進行は患者さんごとで大きく異なっています。これは、遺伝子型の違い以外にも病気の進行に与える要因があるからです。

PKD1PKD2の違いは一つの要因ですが、それだけで同じ経過をたどるわけではありません。