一覧に戻る

私のADPKD診療にかける想い 私のADPKD診療にかける想い

01 患者さんの不安や病気への理解度を十分考慮し、二人三脚の診療を実践 01 患者さんの不安や病気への理解度を十分考慮し、二人三脚の診療を実践

治療法がない時代のADPKD。その患者さんをなんとか「救いたい」という想いが芽生える

医師を志したきっかけとADPKDとの出会い

私は学生時代に親族を交通事故で亡くしています。そのときに生命の尊さと儚さを知り、医師を志そうと決めました。

医学生のころはADPKDについては何も知らず、泌尿器科医となり大学病院に入局してから初めてこの病気のことを知りました。

当時、ADPKDは他の病気と比べ医学的に解明されていないことが多く、有効な治療法も全くありませんでした。そのような病気を患われた方をなんとか「救いたい」という想いが日に日に強くなり、同時にそのことに対してやりがいを感じていました。現在もそうした想いは変わりません。

患者さんが抱いている不安や病気への理解度を十分考慮して、安心していただける医療提供をめざす

患者さんが持たれている想いに寄り添いながら治療目標をご理解いただく

ADPKDは生活習慣病などの後天的な病気ではなく遺伝性の病気であり、患者さんからすれば交通事故と似たような複雑な思いがあるのではないでしょうか。「どうして私がこの病気になってしまったんだ」という思いを常に持っています。そのような状況のなかで、積極的に病気と向き合い「これからどのようなことが起こるか」ということをしっかり理解していただくことが大切だと思っています。

ADPKDは腎臓以外にも色々な合併症があります。そうした合併症にも適切に対応して治療を進めていくことが重要と考えています。

「遺伝病」という点からすると、現代の医療では病気そのものを完治することは難しい状況ですが、ADPKDに伴う症状を発現させないようにする、たとえ発現したとしても軽い症状で生涯を全うする、ということは不可能ではありません。そのようなことを患者さんの目標にしていただいています。

また、「遺伝病だからもう治らない」と後ろ向きに捉えるのではなく、治療介入によって「できること」「できないこと」をしっかり区別してお話をして、できる範囲で積極的に治療に取り組んでいくことが患者さんにとって良いことだと思っています。

ただ、このような内容を一度にお伝えしても、患者さんは混乱されてしまいますので、当院の外来では患者さんの抱いている不安や病気に対する理解度を十分考慮しながら、じっくり時間をかけてお話しするようにしています。

ADPKD診療で心に残るエピソード

ご親族の様子をご覧になられて当院を来院

お母さんもADPKD を患われていて不幸にものう胞感染で亡くなられてしまった患者さんがいらっしゃいます。半年程度の長期間の入院期間があり、その間、息子さんはお見舞いや介護に頻繁に来られて、つぶさにお母さんの経過や様子をご覧になっていました。後日、息子さんが来院され、「ADPKDで新たな治療法ができたことを知りました。ぜひその治療を受けたいのですが」と要望されて治療を開始されました。

ADPKDは2分の1の確率で親から子へ遺伝します。親御さんの病態をお子さんがみていることが少なくありません。その苦しみを目の当たりにしているお子さんは、できるだけそのような状態になりたくないと感じています。そうならないために、もしくは、できるだけそのような状態を遅らせるためにはどうしたら良いか、という内容のアドバイスや介入を行っています。

専門医の治療のもと食事の楽しみを取り戻す

他の病院で厳格な塩分制限やタンパク制限を指導され、近い将来に透析導入の可能性を指摘され、当院を受診されてきた方がいます。この方は近い将来の透析と、食事を楽しめないことに苦痛を感じておられました。当院の専門医がその患者さんをあらためて診断し、透析を先延ばしにするための治療及び生活指導と共に、その方に合った適切な食事指導をしました。その結果、以前と変わらぬ生活を取り戻され、大変喜んでおられましたね。

専門医のもとでADPKD治療を受けてもらい、安心していただきたい

ADPKDはいままで治療法がなかったこともあり腎臓専門医が診察している割合がとても低いといえます。しっかりとしたカウンセリングや治療介入を受けずにきてしまった方も全国に少なからずいらっしゃいます。こうした方々にはぜひ腎臓専門医のもとで、治療を受けてもらい安心していただきたいですね。そして前向きに医療の進歩を感じていただきたいと思います。

これまで20年以上ADPKDの診療に携わっていますが、そのなかで患者さんから言われて一番うれしい言葉は「来て良かった」という一言です。この言葉を励みにこれからもADPKD診療に取り組んでいきたいと思います。

帝京大学医学部泌尿器科 准教授 武藤 智 先生 帝京大学医学部泌尿器科 准教授 武藤 智 先生

経歴

  • 1992年秋田大学医学部医学科卒業
  • 2002年東京大学大学院医学系研究科外科学専攻医学博士課程卒業(泌尿器科学)
  • 2002年東京大学医学部泌尿器科学助手
  • 2003年帝京大学医学部泌尿器科学講師
  • 2007年帝京大学医学部泌尿器科学准教授

武藤先生はこんなドクター!

森山菜緒 先生 治験コーディネーター

泌尿器科チームの一員として治療意欲が高まる導きを大切に

私たち治験コーディネーターは院内で行われる臨床試験の実施をサポートしています。

治療薬の効果や安全性、患者さんの服用状況などを確認するほか、患者さんに困りごとがあった場合には最初の連絡先となって、治験コーディネーターならではの視点で対応しています。

ADPKDは遺伝病のため、患者さんの心理として「病気の受容」と「思い悩み」を繰り返すケースが多いといえます。こうした患者さんの疑問や悩みを適切に武藤先生に伝えることを促し、患者さんの治療参加意識が向上するような導きを大切にしています。また、患者さんへの説明が先生と異ならないよう、常に先生と連携を図っています。

高い専門知識と迅速性をもって対応することで患者さんとの信頼関係が生まれる

泌尿器科チームは医師だけでなく、薬剤師、看護師もADPKDに関する知識レベルが非常に高いと感じています。このため看護師や薬剤師など誰が声をかけられても適切な対応ができ、患者さんの伝えたいことやニーズもきちんと武藤先生に伝わるようになっています。

武藤先生との出会いは院内の委員会であり、幾度かの会合を通じて親しくなりました。

診療場面で思うことは、武藤先生は判断や対応がとても早いということです。このことは日々不安と闘っている患者さんの安心感に繋がっているようです。患者さんの来院希望日に武藤先生が不在であることをお伝えすると、「自分の用事を変更してでも武藤先生に診てもらいたい」と要望される方が多く、患者さんからの信頼がとても厚いと感じています。

新しい治療法を世の中に創出する仕事に携わっている治験コーディネーターとしても、遅い対応は患者さんに不安を与えてしまうため、武藤先生の迅速な対応はとても助かっています。

一人で、家族だけで悩まずに疑問に思うことは、まずは相談を

ADPKDの治療は進歩しています。何か疑問や不安に思うことがあれば、ご本人とご家族だけで悩まずに、まずは専門医にご相談してほしいと思います。

またADPKD患者さんの身体状況は一人ひとり異なります。ご自分の状態を理解することはとても重要なことですので、こうした意味からもぜひ適切な診療を受けていただきたいと思います。

このページの先頭へ