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専門家からのメッセージ

第4回 国家公務員共済組合連合会 虎の門病院
腎センター内科 リウマチ膠原病科 部長 乳原 善文先生に聞く 新時代を迎えた ADPKD診療

乳原 善文先生

ADPKDの患者さんが減らない理由は、人としての魅力にあり? ADPKDの患者さんが減らない理由は、人としての魅力にあり?

ADPKDという病気は、常染色体優性遺伝であることが最大の特徴です。これはすなわち、1/2の確率で子どもに遺伝することを意味します。
遺伝性の病気をもつ患者さんは、どうしても結婚相手として敬遠されてしまう傾向がありますので、患者数は減少していくのが通常です。ところが、ADPKDの場合は、これが当てはまりません。
この理由について私は、ADPKD患者さんが、外見的にも内面的にも魅力的な方が多いからだと考えています。また、知的レベルが高いことも特徴で、パートナーとして望まれる資質を生来的にお持ちなのだと思います。
実際、ご家族は患者さんの治療にとても協力的であることが多く、妻または夫であるADPKD患者さんへの移植という選択肢が示された時には、パートナーの多くがすすんで腎臓の提供を申し出てくれます。
ADPKDの患者さんは遺伝子に病気というマイナス面を持ってはいますが、それ以上に多くのプラス面を持って生まれてこられたのだと感じています。

腎機能の維持、脳血管障害の予防、すべての基本は血圧の管理にある 腎機能の維持、脳血管障害の予防、すべての基本は血圧の管理にある

ADPKDは多くの場合、若い時には何の症状も示しません。30~40代になって、まず血圧の上昇という形で症状が現れます。
ADPKDの治療としては、食事療法や薬物療法などで血圧を適正に管理することが、腎機能の低下を防ぎ透析導入を遅らせる上で、また脳血管障害を予防する上でも大変重要なことです。実際、ADPKD患者さんの透析導入年齢は、1990年頃は平均55歳であったのが、今は62歳になっています。これは、診断後早期から厳格な血圧管理が行われるようになったことが大きな要因であると考えられます。
なお、10~30代といった早い時期から血圧が高くなる方の場合ですが、そのような患者さんでは早く嚢胞が大きくなりやすい傾向にあります。加えて、早い時期から血圧が高くなる方の場合は、脳動脈瘤のリスクも高いと考えられますので、より一層の厳格な血圧管理を行う必要があります。
特に、身近なご家族やご親戚に早くに透析導入された方、若くしてクモ膜下出血などの脳血管障害を起こした方がいらっしゃる場合は、自分もそうなり得ることを認識し、将来を見据えて、しっかりと治療を続けることが大切です。無症状のときに自覚をもつことはなかなか難しいことですが、機能を失ってから慌てたのでは、取り返しがつきません。

治療薬の登場で、基本となる食事療法がより重要に 治療薬の登場で、基本となる食事療法がより重要に

かつてADPKDとは、外科医が治療する病気でした。大きくなった腎臓は外科手術で切除するしかなかったのですが、出血や癒着のために切除が困難であったり、術後の管理に苦労したりすることも多くありました。
そこで、外科手術ではなく内科的な血管内治療として、私たちは「腎動脈塞栓術」を考案しました。「腎動脈塞栓術」は嚢胞に栄養を送る血管を塞ぐことで嚢胞を小さくする治療法で、この治療法が確立したことで、現在は外科手術を必要とする患者さんは極めて少なくなりました。
しかし、これはあくまで腎機能が低下し透析導入が近くなった段階での治療です。そこで次に考えられたのが、腎機能の低下を防ぎ、透析導入を遅らせる方法です。先にお話ししたように、レニン・アンジオテンシン(RA)系阻害薬などの降圧薬を使って血圧の適正管理が行われるようになり、透析導入を平均10年遅らせることが可能になりました。
そしていよいよ、時代は嚢胞がなぜ大きくなるのかを解明し、それを抑える段階の治療へと入ってきました。最近、登場したADPKD治療薬により、バソプレシンという抗利尿ホルモンの作用を抑えるアプローチが可能になり、その成果が期待されています。

土谷 健

乳原 善文(うばら よしふみ)国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 腎センター内科 リウマチ膠原病科 部長 乳原 善文(うばら よしふみ)
国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 腎センター内科 リウマチ膠原病科 部長

1985年3月 大阪市立大学医学部卒業
1985年4月 虎の門病院内科研修医
1990年4月 虎の門病院腎センター内科医員
2001年4月 虎の門病院腎センター内科、リウマチ膠原病科医長
2008年11月 虎の門病院腎センター(分院担当)部長、リウマチ膠原病科部長(本院分院)(兼任)
学会: 日本腎臓学会 理事、評議員、指導医
  日本リウマチ学会 評議員、指導医
  日本透析学会 指導医
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