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専門家からのメッセージ

第3回 東京女子医科大学血液浄化療法科 教授 第四内科 兼任教授 土谷 健先生に聞く 発展するADPKD診療 ~その恩恵を受けられる時代に~

土谷 健先生

ADPKDは、慢性腎臓病(CKD)の1つです ADPKDは、慢性腎臓病(CKD)の1つです。

ADPKDという病気には、遺伝性であること、腎臓に嚢胞ができること、そして現時点では治癒に至る治療法がないことなどの大きな特徴があります。その一方で忘れてはならないのが、ADPKDがCKDの1つであるということです。
CKDは、慢性腎臓病という名前のとおり、慢性に経過して徐々に腎臓の機能が低下する、すべての腎臓病を指します。ですから、ADPKDの患者さんにおいては、ご自身がCKDの患者でもあるという認識が必要です。
そもそもCKDという概念の背景には、腎臓の機能が低下した患者さんは、やがて腎不全や透析になる危険があるだけでなく、心筋梗塞や心不全、脳卒中、動脈硬化などの脳や心臓、血管の病気を合併するリスクも高いという事実があります。ですから、そうした合併症のリスクを減らす観点からも、CKDを悪化させないように、生活習慣の管理や治療をきちんと行うことが大切です。
ADPKDの患者さんの多くは、腎臓の機能に変化のない期間が長く続きます。腎臓の機能が低下し始めたとしても、それが検査値に現れたり、何らかの症状を自覚したりするようになるのは、さらに後になってからのことです。そのような状況下でCKDを意識することは難しいかもしれません。ですが是非とも、CKDの進行および合併症の予防に重要な生活習慣の改善(禁煙、減塩、肥満の改善など)や治療(血圧・貧血・LDLコレステロール値の管理や食事療法など)への注意を忘れずに過ごしてほしいと思います。

ADPKD診療における医師と患者さんとのコミュニケーション ADPKD診療における医師と患者さんとのコミュニケーション

ADPKDは、遺伝による家族内の問題が生じうること、診断から長い経過を辿り、腎臓だけでなく全身に影響が及ぶ病気です。そのため、診断された患者さんに知っておいてほしいこと、注意してほしいことなど、医師から伝えたい情報も多くなります。とても一度に全てを伝えることはできませんので、診断からしばらくは何回かに分けて、また患者さんの状況に応じて必要な情報をお伝えするようにしています。
もちろん患者さんの側でも、「わからないこと」、「知りたいこと」、「不安に思っていること」を山のように抱えていると思います。医師もできるだけそれに応えたいと思っていますが、どうしても診察時間には限りがあります。ですから、診察を受ける際には、医師に知ってほしいご自身の状況、聞きたいことや、知りたいことなどを、できるだけ冷静かつ客観的に、整理してお伝えいただければと思います。
医師が患者さんと接してさまざまな情報を得ることは、患者さんへの適切な治療のためにも必要なことですし、医師がその病気に精通するためにも必要なことです。ADPKDのような病気では特に、患者さんが医師を育てるという側面があることも、患者さんにご理解いただければと思います。

ADPKD診療のこれからの発展に期待 ADPKD診療のこれからの発展に期待

かつては全く原因不明であったADPKDですが、1990年代の半ばに原因となる遺伝子が発見されました。その後、病気についての研究が進み、さまざまな研究の成果が重なった結果として、ADPKDで初めての治療薬が承認されました。医療が着実に進歩していると感じるとともに、1つのきっかけがその進歩を大きく加速させることを強く実感しました。
これからは、この治療薬をどのような患者さんに、どのように使うことが適切なのか、検討と経験を積み重ねていき、個々の患者さんの状況に応じた効果的な治療法が明らかになっていくものと期待されます。また、多くの医師や研究者がADPKDに高い関心を寄せていますので、その成果はやがて次の治療法の開発にもつながることでしょう。
ADPKDの診療は今まさに発展段階にあります。だからこそ、私は最初にADPKDの患者さんにおけるCKDとしての側面について言及いたしました。これからも発展を続けるADPKD診療の恩恵を最大限に受けるために、できるだけ腎臓の機能が低下しないよう、また合併症を発症しないように注意して過ごすことが大切です。そうした日頃の自己管理が、治療への希望につながる時代になったことを、患者さんにはご理解いただきたいと思います。

土谷 健

土谷 健 東京女子医科大学血液浄化療法科 教授 第四内科 兼任教授 土谷 健
東京女子医科大学血液浄化療法科 教授 第四内科 兼任教授

1982年 新潟大学医学部卒業
東京女子医科大学第四内科学入局
研修医~医療練士
1989年 米国エール大学分子細胞生理学教室
ポストドクトラルフェロー
腎の尿細管上皮の形態形成、分子生理機能をテーマに研究
1992年 帰国 東京女子医科大学第四内科学 助手
1999年 同 講師
2006年 同 准教授
2010年 同 臨床教授
2011年 血液浄化療法科 兼任教授
2016年 血液浄化療法科 教授 / 第四内科 兼任教授
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